思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

クレヨンしんちゃん 天カス学園

☆☆☆☆

ほとんど期待してなかったが、予想を良い意身で裏切られた。ただし、メインターゲットであろう子供は、あまり楽しめないかもしれない。ギャグは各所にあるのだが、青春というテーマがそもそも子供にはピンと来ないし(^^;)
予告編からは、あたかと風間くんかま引越しするかのような別れの予感を漂わせていたが、それはフェイクだった。
映画として良くできているのは、主要キャラ全員に物語が用意されていて、映画だけのオリジナルキャラも、多様かつ、主人公たちへの絡みも出オチだけでなくうまく配置されている。いち映画として、脚本が実によくできていると思う。ただし、これらは映画ファンなればこそ評価できるポイントかも。脚本段階になるのかは分からないが、学校敷地内の構造物の形に意味があったのもうまい。そう、本作は映画全体に渡って、ムダな要素がなく、乱暴に言えば、全てが(ミステリーというより、演出として)伏線と言っていい、時間的相互作用が計算しつくされた佳作なのだ。
映画は15作くらいしか観ていないが、ベスト5に入ると言っていい。ちなみにベスト3は多分不動で、『戦国大合戦』『ロボとーちゃん』『オトナ帝国』。覚えている範囲内では4位だね。

以下、ネタバレ

本作が予告編から予想したものと異なる様相を見せたのは、風間くんが中盤あたりで敵の吸血鬼ならぬ吸ケツ鬼によってバカにされて、もといバカになってしまうところ。ここから、終盤まで、風間くんはメインストーリーからは脱落し、普段ならしんのすけがやるギャグ要員になるのだ。とはいえ、最後にはまさかのエリート風間として対決する、というのが、映画だけのキャラと対決するのもいいが、やはりテレビシリーズあってこその映画の王道でもある。
そして『クレしん』映画で燃える/泣けるクライマックスと言えば、ラストでしんちゃんが激しい描き込みと共に猛ダッシュすること。それを周りの一般人たちが応援する、というのも、まさに計算しつくしたベタな演出なのだが、序盤と中盤に登場した不良たちが助けるシーンとかと相まって、何故か涙が出てしまった(^^;) 手口も、その後の展開も読めてるから、別に感動したわけじゃないんだけどなぁ……。
映画の最初にAIが登場した時、絶対に暴走すると思ったのだが、それをせず、『2001年』的に、あくまでも論理的な行動として悪く見える行動をとった、というのも映画オタク、SFオタク的に良かったポイント。
そうそう、忘れちゃいけない、クライマックスの生徒会長チシオの「顔芸走り」。顔はヘン顔なのに、過去のエピソードと物語のクライマックスの盛り上がりとの相乗効果で、笑いながら泣いてしまう。これ、ジブリやディズニーでは絶対にできない、クレしんならではの素晴らしい演出。個人的には感動の涙、という感じではなかったのだが、宇多丸師匠風に言うなら、ここだけで五億点でてますね!