『ビッグデータ・コネクト』
☆☆☆☆
『オービタル・クラウド』では気にならなかったが、警察小説では、小説作法的に読みづらいのが気になった。
会話など、主語が誰か一読、判別しづらいのだ。基本的には主人公である万田の主観なのだが、完全な一人称ではない。おまけに、第三者的な場面が時折混じるので、万田が視点人物であることに気づくのが遅れた。
一見、些細なフィッシング詐欺事件のような導入から、プロットは次々に転がって行く。メインストーリーが見えてくるまでは堅苦しさが目についてしんどい部分もあるが、事件の全貌が見えてくる後半は俄然のめり込ませる。ラストは映画的な盛り上がりで、活劇の大捕り物もある。
終わってみれば、国際謀略ものとして十分な面白さ。システムエンジニア業界の実情は、作者の経歴が生かされているが、京都弁の使い方(不自然さ)には違和感あり。
ビッグデータ・コネクト (文春文庫) 藤井 太洋 文藝春秋 2015-04-10 |