思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

小説の小説

☆☆☆★
似鳥鶏
角川書店

『立体的な藪』☆☆☆☆
本書の本質というか、真髄はこれだけと言って過言ではあるまい。ありがちか、別荘ならぬペンションで起こった殺人事件を、名探偵が警察が来る前に速攻解決……と思いきや……。いわゆる後期クィーン問題から始まって、本当に真実を書いているのはどの立場の分のなのか? ()から、脚注、ルビへとメタ的に階層を超えて行く。作者の言葉すら否定されるのが面白い。あとがきにあるように、円城塔『文字禍』と同じネタだが、単に同じ電波を受け取っただけ(島本和彦的表現。一般的にはシンクロニシティ)のようだ。

『文化が違う』☆☆
いわゆる「なろう系」の異世界小説。美少女にゴリラとつけるように、固有名詞のイメージを逆につける、というのはギャグマンガやお笑い系YouTubeでさんざんこすられてきたので、なにを今から(´Д`) 全ての単語にまで徹底するならともかく、ごくごく一部だし、全然ダメ!

『無小説』★
青空文庫』に上がっているような、著作権の切れた古典小説を数行ずつ継ぎはぎして筋の通りそうな、ものにした実験小説。だから何? というだけ(´Д`) 注がそれぞれにあるので、ある種のネタバレが見えてるし。作中だかあとがきだかで触れられていたように、現代音楽が面白くないように、これもまた面白くない。

『日本最後の小説』☆☆☆★
深水『第四の権力』に似た感じの、ポリティカル・フィクション。本作では、右翼的な政権が、言論統制を始める、という展開。右翼の深水とちがって、ノンポリか左翼の作者なので、右翼政権が、中共文化大革命的な事態を引き起こす、という(政治史的にもあり得ない)展開に。

なお、おまけとして、『野崎まど劇場』のように、カバーにもショート・ショートがあるが、斜め読みしただけ(^^;)