思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

悪の芽

貫井徳郎
☆☆☆★
角川書店

冒頭に、秋葉原事件や京都アニメテロを思わせる事件があり、犯人はその場で焼身自殺する。
彼は何故、こんなことをしでかしたのか? それを探るのは、30年近く前、小学校でいじめの発端を作った男。
ミステリーとしては、ホワイダニットだが、ついに貫井ちゃんが普通の小説を書くに至った、と思いたい。
この小説に描かれるのは、いじめの心理、弱肉強食は人間の真理なのか? 過去を切り捨てられるか? などなど。
ミステリーとしてみれば、主人公が関わる人物側の視点がいちいち直接描かれるなど、伏線として機能していないなど、歪なところが多すぎる。
読み終えて、あくまでもヒトではない「人間」とは、というものを文字通り多角的に描くための手法であったのだと分かる。