思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

土を喰らう十二か月


☆☆☆★

観たことはなかったが、仄聞するだけでも内容が想像できるというのは、ある意味、良い映画(宣伝)といえるだろう。
長野の山村で隠棲する作家の食生活を描いたスロー・ライフ映画。
っていうか、てっきりドキュメンタリーだと思ったのに、ドラマ作品だった。
とは言え、原作者の水上勉を直接に連想させる「ツトム」が主人公で、過去の経歴も、原作となった随筆に書かれていることそのままっぽい。未読だから知らんけど。
『典座教訓』を基礎にした、自然と畑のものだけをいただく食生活は、土井善晴の全面監修で制作・撮影されただけあって、日本食文化の真髄を感じることができる。どれも美味しそうだ。ただ、都会で生まれて、スーパーやコンビニのおかずだけで育った人にはそう感じない可能性もあるけど。海外の映画祭に出したら、各賞を総ナメしてもおかしくなかったんじゃないかなぁ??
撮影がもうちょっとクリアなら良かったのに、残念である。直近に観た『MEN』くらい鮮やかに日本の自然を捉えられていたならなぁ……。
松たか子との恋らしきドラマも、悪いとは言わないが、先述のように、なくても充分に映画として成立するのに。義理の母の手料理や、その死に際しての葬儀の振る舞い(精進料理)を自然に出したかったのかも知れないが。
確かに、これらを、自然に出すには、ドキュメンタリーとしての撮影期間が長くなりすぎるのかも。それでも、1シークエンスの撮影は1日くらいだと思うが、季節ごとに撮る必要があるので、トータル1年に渡っているのだから、スターを使わないぶん、安くもついたと思うのだが……。そうなると、さすがに地味すぎて集客に不安が残るか。

余談だが、あるYouTubeに監督がプロモーションでゲスト出演していて、製作の経緯はわかったのだが、監督まで原作者を「みずかみ」と誤読していたのはいかがなものか(´Д`)