思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

共謀家族


☆☆☆★

事前情報ゼロだと、どこの誰が作ったのか、混乱する作品。
舞台はタイで、モブキャラはタイ人なのに、主人公一家は韓国人、警察局長(なんで署長じゃないの? 吹替版で見たんだけど)は中国人。脇役で見た顔のおじさんがいたが、香港映画に出てた人だっけ? 墓の碑銘も漢字だった。
結論からすると、タイを舞台にした、韓国映画のルックに寄せた香港映画かな??
「映画を千本観た男が、その経験を元に犯罪を行う」と聞けば、映画ファンなら観たいと思わない人はいないだろう。ただし、この惹句にはウソがある(´Д`)
娘が性被害の果てに逆襲して加害者を殺してしまい、それを庇って家族ぐるみで偽装工作を行う。ある種のクライム・サスペンスである。
その際に、犯罪映画のプロットを思い出して、それを真似るのだが、言うほど参考にはしていない。アリバイ工作くらい。事態の展開ごとに、「こういう場面は〇〇という映画にあって、登場人物はこう切り抜けていた」とか言ってくれればいいのに、そういうのは全然ない。
もちろん、惹句がアオリすぎ、という問題はあるが、それを抜きにしても、映画ファンという設定はなくても良かったんじゃないかなぁ。主人公がたまたま最近、映画館で観た映画がクライム・サスペンスで、それを思い出して工作した、でいいんじゃないかなぁ。警察も、たまたま一人の刑事がそれを知る、みたいな。
主人公の娘を脅迫していたのが女警察署長の息子で、署長の夫が市長候補という、明らかに反権力なので、主人公たちが捕まらないように応援したくなる構造になっている。
結果的には、中国資本で作られた映画としては、ギリギリのバランスで着地させたと思う。頭の悪い権力者なら、体制批判だと気づかないかも、という。
キャストは、地味なほうの韓国映画のようで、メインには美男美女はいないが、脇役が良い味を出している。先の七三分けのおじさんや、お店のランニングシャツの金髪のにいちゃんなど。
ルックは、カンニングのマレーシア映画みたいだが、序盤の、ムエタイの試合と、娘がレイプ犯を殺すシーンを交互に見せる(カットバック)する編集は、笑ってしまった。百歩譲って、父親がキックボクサーとかなら分かるけど、単なる試合観戦だからねぇ。いくら後でアリバイ作りで再利用されるとはいえ、そのシーンを観る限りでは、バカバカしすぎる。

以下ネタバレ

一旦主人公が逮捕され、証拠不十分で釈放、警察がアリバイ工作を見破り、再逮捕。決定的証拠たる死体を見つけたと思ったら、違っていたと、権力者に一泡吹かせておいて、最後は過剰防衛かつ殺人の意図はなかったとは言え、人が死んでいるので、直接の犯人ではなく、「良い父親ではなかった」主人公が、親らしく、娘を庇って服役する。妥当な落とし所と言えるだろう。