思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

カンフースタントマン 竜虎武師

☆☆☆★

香港アクション映画を語るのに絶対外せない、スタントマンたちにスポットを当てたドキュメンタリー。
元スタントマン、スタントマン出身の俳優や監督たちのインタビューや、実際のフィルム、NGフィルム、それと現在のスタントマン事情を撮影した映像が、インタビューで語られる内容に合わせて挿入される。この前に観た『ヒットマン』でジェット・リーの相棒役だったおっちゃんも、現監督/俳優として、現在のインタビューが何度も登場していた。
2000年の前後を境に、つまり中国返還を気に、ショウ・ブラザーズなど、香港映画を代表する映画会社が潰れていった。
70から80 年代が香港映画の黄金時代で、当時は、数社あった(考えたら、あの狭い地域に、ひとつだけでも凄いのに、いくつも映画会社があった、というのが凄い。シンガポールにはひとつもないらしいのに)映画会社なかんずくスタントチームが、ライバル心丸出しで、他のチームより凄いアクションを、と鎬を削っていたそう。
内外を問わず、最近のスタントシーンのメイキングとかを見ること、ちょっと高いところから落ちるにもマットを敷いているのに、当時の香港スタントときたら、二階の高さ(足で着地ではなく、背中!)から落ちるのに、掘ってほぐしただけの地面とか、果ては氷のスケートリンクまで! ととてもサモ・ハンが言うように、「死ぬことはない」とは思えない、自殺行為的な、文字通り命懸けのスタントばかり。
後進の育成とかも出てくるが、最後には「実は、下半身麻痺になったり、死んだ人もいる」という、「そらそうやろ」という証言で締め括られる(@_@)
こういう、恐竜進化的というか、ガラパゴス的というか、異常な狂乱は、何かに似ているなと思っていたのだが、『時代劇は死なず チャンバラ美学考』のような、日本のチャンバラ映画とも通じるかも。あとは、日本のオリジナル・ビデオ・アニメ?
当然、アクション映画史として、ブルース・リー、ジャッキー、ジェット・リーについても語られる。京劇にルーツを持ち、それまで舞踊的だったカンフーに、ブルースがリアル路線を持ち込み、ジャッキーがコメディとスタントを持ち込んだ。名前は忘れたが、その間に、実際に「当てる」スタントもジェットについては、『ワンチャイ 天地黎明』での梯子アクションの解説。ジェットが負傷したことで、2組のスタントダブルも動員し、あのシーンだけで、1ヶ月前後かけて撮影されたそう。横回転しながら梯子から梯子に飛び乗るとかは、もう誰にもできない超絶スタントだとか。
しかし、こういうスタントダブルを見分けられるようになると、純粋に驚けなくなるという、メイキングを観ることの、諸刃の剣かも(^^;)