思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ヤクザと憲法

☆☆☆

何かで紹介されていて、気にはなっていた、東海テレビ制作のドキュメンタリー。すごいのが、大阪の西成とかにある、逃げも隠れもしない組事務所に、しかもモザイクなしの実名で撮影していること。後に分かるが、組長に、ヤクザの基本的人権を守りたい、そのためにヤクザも社会人である、とアピールする意図があったのだ。前に読んだ本で、暴対法は憲法違反だと裁判した組長があると載っていたが、もしかしてこの人?(撮影後のことなのかもしれないのか、それについては一切触れられないので、題名の意味は分かりづらい)
マンションとかだと組合から追い出されるのか、事務所は、駐車場が一階まるまるになっている三階建て一軒家。さすがに暴対法以後なので、外に組事務所という看板は出していない。制作は平成20年台後半なので。
出てくるのは、ちょっと強面ではあるが、少なくとも、関西に住んでいれば、普通にみかけるおっさんたちばかりに見える。組長が出所した時の慰労会の面々を自分たちで映したPRビデオの顔ぶれをみても、土建屋の飲み会にしか見えない。
部屋住みの青年にしても、全然組に入るようなチンピラには見えないのだ。
とは言え、第三幕あたりで、部屋住みの青年を、オジキだかが、個室に入れてしばき倒す音声が撮られている。このへんの、ワンポイントの異化効果は、森達也ゴーストライター作曲家疑惑のドキュメンタリー『』と同じ手法といえる。
また、組長行きつけの、新世界の飲み屋のおばちゃんに、ディレクター(カメラマン)が、「ヤクザと分かって接してるのか?」と問うと、「何かあった時になんとかしてくれるのはこの人らだけや」というのもまた、庶民の本音と、役の存在意義の一端をきっちり映していると言える。