思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け


☆☆☆

原題の意味と、内容から邦題をつけるなら、『違法取引』または『ミリオネア・ゲーム』みたいな感じか。
リチャード・ギア演じる主人公は、大手との合併を進める証券会社の社長。最初は、孫まで読んで誕生日を祝う、順風満帆に見えるが、随所に不穏な影が見え、ついに愛人と車に乗っている時に自損事故で、愛人が即死したところか、精神的逃亡生活に。
半分くらい過ぎてようやく気づいたが、本作はコロンボのいない『刑事コロンボ』。つまりは犯人は最初に分かっていて、刑事がどうやって捕まえるか、という話だと。
正直、大金持ちで社長で、愛人もいる、という、私は当然として、誰が感情移入できんねん!? という主人公なので、コロンボ的キャラがいないと、応援する対象がないので、なかなかツラいところがある。もちろん、主人公を追う刑事はいて、やたら姿勢の悪い、叩き上げっぽい男で、役づくりは頑張っているのだが、やはりキャラの弱さはいかんともしがたい。
逆に、主人公の娘で、副社長的な立場の女性は、モデルか? というくらい、やたら美人でスタイル抜群。本作の見どころといえば彼女くらいかも。
ただし、オチはちょっと変わっていて、ただの「金持ちはみんな悪人。悪人は酷い目に合うもの」ものだと思って観ていると、意表をつかれる。そういう意味では、観る価値あるかも。

以下ネタバレ

主人公の行動原理は、証券会社で横領して捕まった人が必ず言う小理屈で、そういう意味では凝った脚本とか人物造形ではない。
先述したように、主人公が最後には捕まるか、その後に有罪判決を受けるところで終わると思ったのに、なんと焦った警察が証拠を偽造したのを暴かれて、捕まらないのだ。おまけに、潰れかけていた合併もなんとか実現するのだ。
ラストの前には、奥さんが不倫には気づいていたのをぶちまけるが、ラストシーンは、名士としてパーティーでスピーチをするところで終わる(話始める前に終わり)。
奥さんの件で、エンドロール後に起こる崩壊の予兆と見るか、『悪いやつほどよく眠る』なのか、見た人どうしで話がはずむタイプの映画だった。