思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アルファヴィル


☆☆☆

ゴダールの白黒の、SF映画。アルファというのは、舞台となる都市の名前がα60というから。
めちゃくちゃ押井守っぽかった。
いちばんは低予算感。未来の、地球ではない惑星という設定なのだが、ロケ地はフランスの町やビルそのまま。SFっぽさは会話の内容だけ。日本の特撮映画やオリジナルビデオとかではさんざん観てきた低予算もそうだが、会話劇ということで、むしろ舞台演劇っぽい。パインランとかの、黄金時代SF小説の雰囲気もある。
そんなんだから、ナレーションがないと訳わからんので、ナレーションだかモノローグだかわからないセリフが随所に入ってくる。それが字幕がなかったら、フランス人でも聞き取れないんじゃないか、というくらいめちゃくちゃしわがれ声で。
抽象的にも見えるネオンサインのアップとか、幾何学な模様が意味もなく何回も入ってくるあたりも自主映画的な予算のなさを感じる。
それでも、なんとなく全体に緊張感が漂うのは、さすが巨匠なのか。
思弁的なセリフとか、思わせぶりな演出、クライマックスにドンパチはあるが、結局は何がかいけ
主人公は、老けて顔がぶつぶつになったユアン・マクレガーみたいなおっさん。彼のアップがしょっちゅう出てくるので、見目は麗しくはないのだが(^^;)
プールの飛び込み台で銃殺死刑を執行して、横のレーンにいる女たちが死体を拾いに飛び込むって、わけわからんし。
ちなまに、クライマックスで暴走する都市のメインコンピュータは、リール式のタイプ。ってこは50年代か60年代ってことかな?
アイメイクのやたら濃い女優が出てくるが、ひとつ(だけ?(^^;))、部屋のスタンドを真横から顔に当てたカットが、ゾクっとするほど美しかった。

余談
科学知識のない人がSFを作るとやらかす定番の間違いが本作にもあった。「光年」を「時間の単位」として使っていた(´Д`)