思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

バッド・トラップ


☆☆☆

アメリカの田舎マサチューセッツで、マフィアの手下として盗みをやっていた主人公が、失敗して縁を切られたが、偶然知った一攫千金の盗みで恋人と人生をやり直そう、という話。
原題は『ABSTRACT』で、何のことか意味が分からないが、終盤になって分かるという趣向だ。もしかして邦題は『バッド・トリップ』のダジャレ? ダブルミーニングというには、麻薬は出てこないので成立しないから。
序盤に車の修理工として夜遅くまで頑張って働いている男が出てくる。彼が、最終的には主人公たちと行動を共にするのかと思いきや、あっさり殺されてしまう。
その後、マフィアから縁を切られ、カタギの仕事を始め、その前後にラテン系の女をナンパして付き合い始める。私的にはフィフィと大差ない感じで、別に美人には思えないが、作中ではやたらとモテる。そんな彼女が、50万ドルの抽象画を盗む計画を持ち込む。
情報なしで観ると、意外な展開になるので、期待値が低いほど楽しめるかも。

以下ネタバレ

原題の意味は、クライマックスの盗みが、抽象画を盗むことから。最近流行りの邦画風に邦題をつけるなら、『抽象』という感じか。
ユージュアル・サスペクツ』とかのように、絵画強奪計画がスタートすると、雪崩を打つようにどんでん返しが連続して、一気に引き込まれる。
何せ、主人公たちコンビが盗もうとしたのは、価値のない絵で、50万ドルの抽象画は、直後に彼女が盗んで行き、ライバル会社の強欲ジジイに渡してしまうのだ。そもそも主人公にナンパされるきっかけだった、財布を落としたのも、彼女のほうの仕込みだったのだ。ただし、ラストには、強盗中に事故で死んだと思わせた主人公が、復讐しに来るところで終わる。
この畳み掛けが面白いのだが、そもそも最初の自動車修理工場への強盗に失敗した全然名の知られていない主人公を、峰不二子的な彼女が騙しに(利用しに)かかるのか? というのが致命的な構成上の欠陥ではある。が、まあ観ている間はツイスト連続による力技で、考える暇を与えないだろう。
なお、本作での強盗は、目出し帽を被るだけでなく、その下にハゲ男の頭全体にかふるタイプのゴムマスクをつけているので、絶対に面が割れない、という用意周到ぶりに関心した。