思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アンチグラビティ

☆☆☆☆

映画秘宝』で記事を読んでから、観たいと思っていた、ロシアSF。最近はロシアのエンタメ映画に良作が多いよなぁ……。
始まってから数分間、主人公が色んな体験をするのにセリフが一切ない、という思い切った構成。
宇宙に大地の断片が浮かび、しかもそれらが垂直にも逆さまにもなっている、という状態であるのが邦題の所以。観ながら、たぶん原題からかけ離れた邦題だろうからもし私が邦題をつけるなら『コーマ・ドリーム』あたり? と思っていたら案の定、ラストにタイトルが『KOMA』だった。英語でいうcomaだろうなぁ。
似た作品を挙げるのが手っ取り早い。空中に島が浮かぶのは『アバター』だが、重力方向が変わるのと夢の中という設定は『インセプション』、現実ともう一つの世界まさしくアバターというのは『マトリックス』である。世界を彷徨う怪物というのは、どうしても『ハイペリオン』のシュライクを連想せずにはおれない。
その設定から、ほとんどのカットがCGとの合成。しかも、それもある(数が多い)せいか、レンダリングの質は、ハリウッド超大作に比べると、ケーブルテレビのレベルであってもやはりアラが見える。劇場ならなおさらだろう(´Д`)
主人公は売れない(世間から認められない)建築家なので、昏睡世界でも空中に建築物を出現させられる、という能力を持つのだが、その現出エフェクトは、せっかく建築士なので、構造材から内部素材、など、『インビジブル』よろしく、順番に描画してくれたらなおよかったのになぁ・・・。

以下、ネタバレ

昏睡状態の人たちの夢の中の世界、というのはいいとしても、誰もが同じ世界にゆく、という理屈が全くないのがいい加減なところ(´д`) ケーブルを繋いでいるわけでもないのだ。いろいろな管は繋がれているが、どれも医療用のもの。
首謀者が新興宗教というのはありがちだが、それが1周回って科学者、というのは逆に面白いかも??
ナンバー2のルックスが『マトリックス リローデッド』でカンフーを使う中国人と同じような服とグラサン、というのがモロで面白かった。
ラストでは、恋人が時間切れで消滅するのだが、現実世界に戻ったら普通に、ギリギリ間に合いました、って?! その前の消えかける、って展開はいらんやろ?!

2020年 ロシア