思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

峠 最後のサムライ


☆☆★

予告編は何度も観たが、そこから期待した内容とは違う雰囲気だった。
司馬遼太郎原作なのだが、下敷きにしているのはプロットくらい(歴史ものにおいては、つまり単なる史実を元にしている、つまりは原作なくても成立するレベル)。イメージとしては、副題のほうだけでいきたかったんじゃないか、という感じ。
冒頭、徳川慶喜大政奉還についてザ・説明セリフ的に背景から心情まで説明して、それに対して誰も反対しないとか、全体的に、歴史に詳しくない人向けになっている感じ。
河井継之助といえば真っ先に思い浮かべるガトリング砲についても、戦場で撃つ場面は出てくるものの、これまでの鉄砲となにがどう違うのかの説明が全くない。これも「浅い」一面。
だからというか、妻への愛情とか、官軍への直談判のシーンとかはじっくり描いている。そういう点で「サムライ」といういち人物の側面を焦点にしていることが分かる。なので、動乱の幕末の、歴史という事実の連鎖を楽しみたい人には物足りないのたま。
唯一、印象に残ったのは城に火をつけて、炎上する天守閣を遠くから(昔ならマット・ペインティングで表現するくらいの構図で)映して、それがカットを割らずに崩れ落ちるカットくらいかな。