思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ピンデンブルグ

☆☆☆★

航空機関連に関心のある人なら誰でも聞いたことあるであろう、ドイツの巨大飛行船ヒンデンブルグ号の爆発事故。それを主題にしていて、ケーブルテレビの紹介文では、実写ニュース映像とかも交えている、とあれば、どんな事件だったのか勉強にもなるだろうと、観た次第。
まず、建造中からちょっとだけ見せてくれる。当時は飛行船ブームだったんだそうな。確かに、第二次大戦前は、そこまで飛行機が民間ユースには普及していなかったので、分かる気はする。飛行船と
といえば逆水滴型の布製のものを思い浮かべるが、さすがは世界一の巨大飛行船だけあって、トラス構造の骨組み(銀色だし、アルミ?)でできている。そこにも銀色の覆いを被せるのだが、てっきり極薄の金属かと思った。前半に、尾翼の一部に切れ目が入って、外反がめくれる事故があった(史実かどうかは分からない)際、パタパタとはためくので布製なのか?
客室デッキが下部ではなく、『コトブキ飛行隊』のように胴体の内部にあったことも、金属製外板かと錯覚した要因なのだが。抵抗を減らすために、ゴンドラを内部に置いている、とイメージすればいいのかな?
巨大な船体は、マット・ペインティングと、ミニチュアで表現。これがよく出来ていると言っていいのか分からないが、どのカットもマット・ペインティングに見えるという(^^;) 飛行船なので、ごくゆっくりな挙動しかしないので。
ストーリーは、スパイがいるらしいということで、ドイツ空軍の将校が捜査のために同乗。彼が主人公で、怪しい人物を探す。登場人物はゲシュタポ、軽業師、伯爵夫人など、クセのある人ばかり。
観ながら、強烈な既視感が終始一貫してあった。それが『サンダーバード』それも『サンダーバード6号』だ。人物が本物ということを除けば、巨大な航空機による事故やテロ、というのは『サンダーバード』のよくある展開。しかも、本作は巨大飛行船ヒンデンブルグ号はミニチュアだし、事故を起こすのはほぼ全観客が知っているのだから。あとは『タイタニック』ね。いちおう本作にもひとことその名前が出てくる。沈没前であろうが。
そんな構成だから、序盤は、乗り物パニックものとして見ていたし、その要素は充分で、作り手も半ば以上意識的にそのフォーマットを踏襲していたと思うのだが、そうはならないのが、本作の良し悪しを超えた特徴。

以下ネタバレ

なにしろ、事故と言っても、テロリストの仕掛けた爆弾が爆発したのが原因、というのが本作の設定(事故の原因の説のひとつらしい)。しかも、爆破したら、爆破の惨状を描いて映画も終わり。プロットとしては、爆発事故が発生して終わり、と言っていい。
演出的に面白いのは、爆発したら、画面が白黒になること。映画は冒頭の白黒ニュース映像から始まるので、それを対をなすわけだが、『クルスク』の画面比率変更と同じく、カラーの間は想像ですよ、という意味もある。
白黒のほうが、ドキュメンタリーっぽくてリアリティがある。特に船内の人物は、フィクションだと分かっていてもなお。
爆発して崩壊する船体も、特撮と記録映像の差がわからないレベル。