思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

テイク・シェルター


☆☆★

情報ほぼゼロで観た。原題も同じだが、『私をシェルターに連れてって』的な軽いノリではない(^^;)
なんせ主人公はゴツい顔のおっさん。『マン・オブ・スティール』のゾッド将軍をやったくらいの悪役顔なのだ。
その妻のおばさんは、これまたどこかで観たような、ありがちな欧米顔。調べたら、『エヴァ』だか『ハンナ』だかの主人公をやってた。ちなみに、本作では彼女の娘の役名がハンナというからちょっとややこしい。
冒頭では、迫り来る竜巻と、黄色い雨(ちょっとわかりにくい)が映されるのだが、いったん場面が過去に戻る。
本作は、ディザスターものの定番、危険を予知するが、誰も信じてくれないもの。なのか、何かを察知するが、結局逃れられずに殺される心霊系ホラーなのか。ある程度映画を観ている人であれば、そういう「何のジャンルの映画なのか?」という視点でも楽しめる。
ストーリーは、簡単に言えば、主人公が悪夢(予知夢?)に悩まされ、災厄に備えてシェルターを増築するが、誰にも真意を伝えないので、妻を含め、周りと次々に喧嘩するというものなので、見ていてストレスが溜まる事この上ない(´Д`)
おまけに、一つ一つの演出に「タメ」な長いので、それでいて全体の尺が2時間、というのはちょっとしんどい。
これがコンパクトに90分くらいであれば、ジャンル映画として可もなく不可もなく、という仕上がりになったであろう。調べたら、本作は色々な演技賞をとっているらしいので、ソフトストーリー的な繊細な感情表現を狙って、なおかつらそういうのが好きな「エライ」評論家や映画祭の審査員には受けたのかも。でも、私のような(ひねくれた)ジャンル映画好きには、イマイチ。
前述の内容を補強するように、娘が聾唖であることが、ほとんどストーリー上の意味がないことが挙げられる。耳が聞こえるようになるための手術費用を主人公がシェルター作りと失職で失う、というくらい。

以下ネタバレ

終盤で、ちょっとした嵐が来てシェルターに家族で逃げ込むのだが、妻が扉に手を当てて嵐が収まったと、夫に手を当てさせるのだが、彼はまだ嵐が収まっていないと主張する。このシーン、それまで何度も彼が観る悪夢を現実であるかのように見せてきたのだから、ここも、彼の主観(幻覚)として、嵐が轟々と吹き荒れる映像か、少なくとも効果音を入れるべきだった。
さらに、本作の特筆すべきところは、ラスト。さんざん引っ張ってきた、特大の嵐を主人公だけがシェルターで助かるのでも、嵐が来ることが妄想で、神経症が直るわけでもないのだ。なんと、気分転換にと、精神科医に勧められた毎年恒例の海水浴に出かけたら、ほこで嵐に遭遇して絶体絶命、というオチなのだ。
これ、完全に心霊ホラー映画の構造だよね。そう、本作は世にも珍しい、ディザスター映画に見せかけたホラー映画なのだ(^^;) 主人公が災厄に逢う原因が全く描かれていない、というところも心霊ホラーらしい要素だ。
逆に、ここまでを、1時間くらいに縮めて、ここから嵐の中を逃げ惑う、エメリッヒ的なパニックものにもできたのになぁ……。
とにもかくにも、オチのひねり具合を楽しむには、フリが長すぎて冗長すぎるのが問題という、クセが強い作品。