思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

美神解体


篠田節子
☆☆☆★
角川ホラー文庫

顔が醜いというコンプレックスから、マネキンのような徹底した整形をした主人公。その結果、逆に敬遠せれるようになったのだが、とあるデザイナーに惹かれ、彼の別荘を訪れる。妙にそっけない彼には、地下に秘密を隠していた……。
ホラー小説としてはよくある設定だが、ホラー映画でいうところの「アタック」はなかなか来ず、「なんだ猫か」的な外しが多い。
だかそこは小説的センスのある篠田節子、ホラー文庫なら定番の展開であっても、脚本的な描写にとどまらず、しっかり修辞していて、読ませる文章だ。
予想とはちょっとだけ違う結末で、小説としても、ホラーとしても、女流文学としても、トータルの完成度として、隙のない一作となっている。

以下ネタバレ

デザイナーが、リアルな等身大の人形を偏愛している、とわかった時は、そう来たか、となったわけだが、本作はそこから一捻りふたひねりある。
その人形は、ドイツ製の、いわば「美人すぎる人体解剖模型」なのだ。元々医者になるはずだったので、外側だけでなく、内蔵のディテールすら愛しているのだ。
そこまでくれば、人形のように整形された主人公を解体したい、となるのは誰でも予想できるところで、あとはいつやるか、というカウントダウンに過ぎない。
男としては、デザイナーのほうに感情移入したくなるので、彼の願望を叶えてやりたくなるが、果たして結果は……。