思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

暴虎の牙

柚月裕子
☆☆☆☆
角川書店

三部作の完結編ということだが、全然そんな感じはしない。むしろ、本作は沖という半グレを主人公にした、サイドストーリー。前半生には大上が関わり、刑務所暮らし挟んで、後半生には日岡が関わる。まさしく、第一作と、二作を繋ぐ、というか、またぐ作品。いわば2.5弾で、日岡が、大上の悲願であった、佐々子組を壊滅させる真の三部作完結編があって然るべきだろう。
この沖というのは、映画『狐狼の血2』の鈴木亮平の役に似て、凶暴なヤツではあるが、あくまでもヤクザを蛇蝎の如く嫌っており、しかもカタギには手を出さない、というのが大きな違いか。
映画の感想の中に「3作目では大上の活躍が見たい」というのがあったが、そんなこと、作者はとうに折込済みだった。特に、ダークヒーローの沖の目線で書かれるので、色んな意味での暴走を食い止める大上は、まさに絶対的な存在として立ちはだかる。
後半では、沖を逮捕するべく、刑事物っぽいサスペンス•アクションが展開する。ラスト一行(一文だったかな?)には、「そんなのなくてもいいのに(^^;)」というツイストがある。
『百舌鳥の叫ぶ夜』なんかにも通じる、読み応え抜群のエンターテイメントである。