思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『わずか1しずくの血』
☆☆☆★
文藝春秋

95年に連載され、完結したのに単行本化されなかったであろう幻の作品が作者の死後に日の目を見た。
と思われるのだが、こういう素性の作品はその辺の解説を付けてくれないと困る。

切断された左足の白骨が見つかった。それを本人が電話で夫に予告し、なおかつその後にまた電話をかけてくる。最初っから意外過ぎる幕開けである。その後も、連城マジックとして、縦横無尽の細かいドンデン返しの連続。これをこの段階で明かすの? という真相も早いうちに随所にあり、どういう展開を迎えるのかは、残り10ページくらいになるまで全くわからない。
アリバイ崩し、ミッシングリンク、フーダニット要素もあるが、最大の焦点は、敢えて分類するなら、ホワイダニットものと言えるだろう。
こんな動機、連城氏以外は誰も考えないだろう(^_^;)純文学的に突き抜けた為にバカミス的にも取れる仕上がりに。
推理「小説」として間違いなく最高の連城作品。特に本作では(純文学的な?)エロ描写も結構過激である。
ただし、犯人に関わる女性たちの心情は、(高度に恋愛文学しすぎていて?)さっぱり理解できなかったなあ…(@_@)

類似作を挙げるのもネタバレになるので、知りたくないなら以下はパスして下さい。

『敗北への凱旋』の姉妹編、というのが最も適当な分類だろう。

わずか一しずくの血わずか一しずくの血
連城 三紀彦

文藝春秋 2016-09-15