思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

日本海海戦 海ゆかば

☆☆★

最初と最後の、各々20分くらいしか観てません(^^;) 日本海海戦での、旗艦である戦艦三笠の乗組員たちの戦争ドラマ、というのが分かれば充分。特撮ファンとしては、最後の海戦シーンがどんなものかチェックするのみ。
横浜にある実物(大の復元だっけ? そのものだっけ?)でロケしているので、甲板上に乗員たちが並ぶシーンなど、本物の迫力があるのは良いのだが……。
ペンキのせいか、ツヤありの砲身とかは、逆にチャチに見えちゃうんのが難点。
とにかく、実物大とはいっても、港に横付けされているし、対岸も映るのか、甲板から外が一切映らない、ドアップか、極端なアオリばかりで、航海シーンではカメラを艦体前後に移動させてみたり、苦心の跡がありありと見える。
もちろん海洋シーンとして、ミニチュアも使われていて、波の感じからして、スケール(ミニチュアのサイズではなく、縮尺)は『連合艦隊』の大和と同じくらいだろうか。特撮マニア的な見どころは、ロシア艦隊が二列縦陣でやってくるのを双眼鏡で覗きいている主観カット。望遠レンズの圧縮感がリアルに出ていた。
ミリオタ的には、実物三笠で砲撃しているカットで、全て砲塔が真正面を向いていること。どうしても実物大の砲煙を映したかったのは分かるけど、こだわったわりには、見栄えはミニチュアと大差ない(^^;)
あとは、戦闘前に風呂に入るシーンの描写とかはリアルなのかも。風呂といっても、昔のプールの洗体槽と変わりないところに3人ずつ数秒浸かるだけ、という厳しいもの。
最初に書いたように、人間ドラマパートはスパッと飛ばして、バトルシーンのみの鑑賞だ。
これ、海軍史のみならず、日本近代史を全然知らない人が見れば、ウソだらけというのか、日本人向けの「盛り」が酷すぎる。
大東亜戦争での戦艦大和の最期を描いた『連合艦隊』のようで、まるで沈んだかのような惨状だ。おまけに、最後にテロップで大勝利であることが表示されるのに、音楽などの演出は、日本軍が負けたようにしか感じられない。
要するに、「戦争イコール悪」であり、戦争は悲惨で人が次々に死ぬ、という主義主張が全面に出すぎて、史実すら歪めてしまった。そもそも、日本海海戦は、艦隊レベルで片手で数えるほどしか被弾せずに、ロシア艦隊を全滅させた大勝利なのに、本作では、火だるまになりながら、それでもいつのまにか敵艦に当たっていた、というおかしなことになっている。少しでも日本近代史を知っている人(歴史ファン、ミリオタ、右翼)からすれは、これを珍作といわずしてなんと言おう。
そんなに嫌いならなんで、よりによって日本戦史上でも稀に見る完全勝利の戦いを描く映画を作ったのかとツッコミたい。「たまには日露戦争の映画でも作れ」という指令が第一にあったのかねぇ。あるいは日露戦争100年記念の製作だったとか?