思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

U・ボート

☆☆☆☆

古典とも言える超有名映画で、しかも戦争映画なので、今更見るまでもないと思っていた。ふと思い立って観てみたら、これが普通以上に面白い。早送りする暇もなく観れた。
まずは、大戦中の潜水艦に詳しくない私から見たら本物、または実物大プロップを使ったとしか思えないUボートの、ドック(ドック内に数隻ある!)そして出撃シーンに度肝を抜かれた。ハリウッド大作でもないので、ミニチュアで当然であろうのに。さすがに航海中のカットは一部だけホンモノであとはミニチュア。といっても割と大きくて、『連合艦隊』の大和くらいはありそうだ。
潜水艦内のシーンになると、主役(の内のひとり)が艦内を案内されるシーンが、カメラが案内役な兵士を追って狭い艦内を奥へ奥へと進み、通路が狭いが故にカメラの目の前を人物がカメラ目線で次々に横切ってゆくところが『神々のたそがれ』とそっくり(であるが故に面白い)である事に驚いた。もちろん白黒ではあるが『神々のたそがれ』のほうがはるかに後年の映画なので、そちらが本作のカメラワークのオマージュというか、影響を受けているのだろう。これ、全て対象に対して俯瞰的な、引いた視点というのがなく、あらゆるものが観客の目の前にあるので、必然的に当事者意識と言う、緊迫感、臨場感が生まれるのかもしれない。
ディーゼルエンジンなども含め、ホンモノの潜水艦(先に書いたように、Uボートかどうかは置いといても)の迫力にあるれている。食料として、あちこちにバナナがぶら下がっていたり。
もちろん、潜水艦ものの定番の、安全深度以上の沈降や、水漏れ、酸素不足の展開もある。むしろ、ほとんどの要素が、『沈黙の艦隊』でオマージュされていると言っても過言ではないかも。
ミニチュア特撮だが、夜のジブラルタル海峡付近の港をバックに、キラキラ月明かりを反射する波間からゆっくり潜水艦が浮上するカットには感動した。