思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ヴァレリアン

☆☆☆☆

すっかりB級映画監督として定着した感のあるリュック•ベッソンなよで、本作も『フィフス•エレメント』の二番煎じ、三番煎じだと思ってスルーしていた。ふと思い立って観てみれば、これが面白い。いや、どう見ても『スターウォーズ』のパクリなんだけど。『エピソード7』には負けるかもしれないが、それ以降の正編、外伝には負けてない。「クローン•ウォーズ」のいちエピソードです、と言われても何ら違和感がないレベル。
もちろん、原作コミックは『スターウォーズ』よりも以前から存在したとか、似て非なるものであることは承知の上で。周辺情報は、見終わってから知ったので、見ている間は「まんま『スターウォーズ』やん。でも全編テンポよくて楽しいから良し」という感じ。
ヨーロッパSFは、ハリウッドと違って、画面の色調がビビッドなのが特徴で、本作序盤の砂漠のようなシーンでは、テレビスタジオのようなチャチさがあるが、暗めのシーンでは、ネオン街のような煌びやかさがあって良い。
パクリ映画は、同じ国内だと言い訳や控えめ表現にする必要があるが、香港映画のように、国が変わると衒いがないのが良い。本作では他にも『マトリックス』や、『アバター』、もしかしたら冒頭は『楽園追放』など、有名作品のいいとこ取りというか、印象的なデザインをあちこち取っている。主人公二人は『タイタニック』の二人っぽいし、おまけにヒロインはスレンダーにブラッシュアップ(?)されてるし(^^;)
中でも、『スターウォーズ エピソード2』で、最も楽しいシーンと言えなくもない、コルサントの下町のごった煮感を全編に満遍なく配置したようなバラエティ豊かさが楽しい。
ミステリーとしては、かなりわかりやすいが、このへんも『エピソード2』を意識してるっぽい。恋愛ものとしても、同作の身悶えするような演出がなく、SFとして普通に観られるもの。このへんはさすがは百戦錬磨のベッソン監督、というところ。
デザインも宇宙船からエイリアンまでスタイリッシュで、四角い顔のくろいドロイドが格好良かった。マックスファクトリーかモデロイドあたりからなら、プラモ出ないかなぁ……。
なにより、さすがはおフランスだけあって、ファッションが良い。『フィフス•エレメント』の時ほどインパクトはないが、デザイン、生地(仕立て)ともに、上質、という気がする。ファッションには詳しくないので、あくまでも「気がする」レベルでしか言えないけど。でも、ある意味でそれの融合したものが先述のドロイドと言えるかも。宇宙船が同じ形の小さいやつに分離するギミックは、『ガーディアン•オブ•ザ・ギャラクシー』の逆、と言えなくもないが、楽しいし、形状的にも、フラクタクルで、数学的にも正しいし。
どうでもいいが、「ヴァレリアン」って、主人公の名前やったんかい!? というのが最初のツッコミポイント。まあ、『マンダロリアン』の時に「主人公の名前じゃなく種族名なんかい!?」と思った、その反対なので、観客なんて勝手なもんだから、そのへんは単なる人それぞれ。
とにかく、ビジュアル優先のSFアクション好きなら必見と言える。後は、『スターウォーズ』ファンにも。これ、ファンがプリークェルー以降求めていたものが詰まってないかい?
アバターの青いやつを白に変えたようなヒョロ長いエイリアンは、やっぱりキモイけど。

以下ネタバレ

ミステリーとしては、司令官が元凶であることは、序盤からあからさまに怪しく、私でも分かったくらいの優しさ。でも、そもそも『スターウォーズ』が子供向けでもあったのだから、ベッソン版『スターウォーズ』である本作も、これでいいのだ。