☆☆☆☆
細部までピッキピキにピントが合った(ように感じる)シャープな映像が魅力の、近年のロシア映画だが、本作は、映像だけでいうと、そこまでのものではなかった。
テーマも、最近のロシア映画にちょくちょくある、侵略SF。
まず、ロシアのモスクワ付近のにょうど円形の数十(数百?)キロ圏内の除く、全世界が音信不通、ブラックアウトする。これが英語タイトルが『blackout』である所以だ。
圏内のロシア軍は、周囲に威力偵察部隊を送るが、ことごとく全滅、あるいは壊滅的被害を受けて、すぐに基地に戻ってくる。
主人公の部隊は、無数のクマの襲撃を受ける。
果たして敵の正体は……?
映像もストーリーも最上級とは言い難いが、ある種の戦争/紛争のリアルさ、そこにおける死のあっけなさ、非情さは一見の価値ありかも。必見とまでは言わないが(^^;)
本作でも、ヘリなどの架空兵器から、装甲車や銃器などの現用兵器、犬型のロボットまで色々登場するのがミリオタ的な見どころ。兵器を外国に売り込みたいロシア軍産複合体のプロパガンダだろうか?
SF/ミリオタ的には、主人公たちのアーマーが、『武器よさらば』のようなパワードスーツであることに要注目。特に外骨格式の上半身とか。このへんになると、最新装備かSF的なフィクションかわからない。
本佐の見所は、中盤以降に、人間をバタバタと殺しまくるシーン。エイリアンに操られているから、敵なのだが、日本とかハリウッドなら、身近な人なら正気に戻るとか、余地があるものだが、そういうことは、中盤に、助けた子供に隊員を殺されたことで、あっさり排除。ゾンビものですら特殊メイクで人間ではない感じにしているのに、本作では普通の人間を容赦なく乱射している。ここまでの大量殺戮は、『ワールドウォーZ』か、戦争映画じゃないとお目にかかれない。うがった見方をすれば、ソ連共産党の人民虐殺とか、内戦のメタファーなのかも。そう真面目に考えると恐ろしいが、まあスプラッター映画のノリで見れば、遠慮なくバタバタなぎ倒してゆく描写は、ある種、痛快ではある。見方も徐々にやられていくのがリアルだし。
以下、ネタバレ
エイリアンのデザインは、顔の鼻頭から下が、顎まで細長い鼻の穴。コピーする時に下に動かした、みたいなへんなデザイン。
でも、『エイリアン・コヴェナント』の人類の造物主にあたる位置にいるので、ヒトにそっくりでもおかしくはない。
デザインで言えば、エイリアンの宇宙船はボロボロの種みたいな形状で、SF映画史上に残る地味さ。『デューン/砂の惑星』といい勝負かも。入り口周辺の、角柱がスライドして開くようなあたりは面白いが。内部はこれまた『エイリアン』シリーズのオマージュ。
酸素入りの液体を漏らすと速攻で死ぬあたりは時間の節約か(^_^;) ところが子供が冷凍睡眠されているエリアになると、途端にためらうようになり、ラストは子供エイリアンが大量に目覚めて終わり。「それでどうなるの?」というぶつ切り感だ。『スカイライン 制圧』を上回る唐突さで、この後、彼らに侵略されて人類滅亡、とも、心変わりしてやっぱりエイリアンをぶち殺しました、とも取れる余韻。