思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ガキ帝国

☆★

映画の中には、公開当時見ないと、後世に観ても、何がどうやっているのかも、何を描きたかったのかも分からない、というタイプの作品がある。時代性という点ではドキュメンタリーに近いのかもしれないのだが、フィクションとなると、ナレーションとか字幕などでの説明がないだけに余計難しい。
本作は、井筒監督による、大阪の不良少年たちの南北抗争(とでも名づけようか)を描いた映画。
主人公は島田紳助。この時点でもう昔の映画、という感じだ。本作に登場すら俳優で、今でも名の通って活躍しているのは志垣太郎(じゃないかも)だけ?
私的には神岡龍太郎のファンなので、師匠がメガネをかけず、ヤクザとして若手をボコボコにするアクションとかをやっているのをみるのは初めてで、めっちゃ新鮮だった。『パベポ』とか、テレビの司会者としてのイメージしかないから。もちろん師匠とて芸能界的には過去の人だしね。
何が分からないって、高校生が大阪のキタとミナミで勢力争いしているのがピンと来ない。ケンカのレベルも分からない。血を流す適度なのかと思いきや、改造エアガンで死人が出たり、最後には紳助のツレ(これも大阪弁やわなぁ)が蹴り殺されたりする。
交わされる言葉というか、単語も、仲間内の隠語と、死語、なくなった物とかが三重苦で、なかなか難しい。彼らの中に朝鮮人が混じっていて、途中で突然朝鮮語で会話する場面があり、しかも字幕も出ない。関西人の私だが、油断していると日本語なのか朝鮮語なのか一瞬分からないことがちょいちょいあった。
あと、根本的な問題として、主要登場人物を高校生と信じさせるのは無理がある。島田紳助だぜ!? 知らんけど、どう見ても二十代半ばか、30くらい。今で言う半グレ、または仕事もしないチンピラにしか見えない。
映画には白黒時代から出ている、いとこい師匠が、紳助の父親役で、いい味のコメディ演技を見せてくれる。でも、こんな不良でも父親としての威厳がある、という関係性はやっぱりわからん。
そういや、紳助のツレ役は、ヤクザ映画における山城新伍的なキャラだが、もしかして彼が紳助竜介の竜介のほうだったりする??(奇しくも、紳助の役名が「竜」なのだが)(漫才はほぼ見たことないのだ)
映画としては、中盤までは劇伴がなく、ドキュメンタリータッチ。中盤でディスコの作中音か? という曲が流れて以降、ちょくちょく劇伴がかかるようになる。どれも、ちょっと外した感じ。
本作は、要する、ちょっと社会からズレてはいるが、若者の青春を描いた映画ってこと? 『イージー・ライダー』(このイージーって、安直、短絡的な、何も考えてないって意味?)のようなアメリカン・ニューシネマ的な。
ラストは紳助のツレ(三人組のうち、たいとうな関係だったほう)機動隊になぐりかかり、逮捕されそうになるのを逃げおおせる。このへんも、全共闘的な時代性と、監督を筆頭とする反社……じゃなかった、反権力・左翼的な思想ゆえなのかな?
こういう映画こそ、「副音声でムービー・トーク」のように、令和の現在な音声解説つきで見ないと、全然理解できん。