思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

キング・オブ・コメディ


☆☆☆★

冒頭、オープニングがストップモーションで、歌が流れる中でのクレジットなので、大丈夫かいな?(´Д`) と思った。
序盤は、売れないコメディアン志望のデニーロが、同じく司会者のおっかけである女と手を組んで、人気コメディ番組司会者をストーキングして、なんとか自分のトークを録音したテープを聴いてもらおうとする。デニーロが好きな女は別にいて、バーで働いている。日夜、自分の部屋でテレビに出た時の練習をし、デニーロの妄想がシームレスで挿入されたりするなど、驚くほど、『ジョーカー』にそっくりな映画だ。
中でも、観覧席を埋める人々の写真を等身大にして壁いっぱいに、貼り、その前で練習するシーンは、偏執狂と夢見る男と、妄想の中に生きる男という、三重の意味が取れる名シーンだ。
女が司会者を見張るのだが、テープで椅子に過剰にグルグル巻きにされた姿は、『ビジュアルバム』を筆頭にした松本人志コントそのので、笑えたシーン。
クライマックスの5分間にも及ぼうかというノーカットのスタンドアップ・コメディのカットは素晴らしい。内容については、アメリカン・ジョークなので、日本人的にオモロいかどうかはさておき、一流のスタンドアップ・コメディアンを完璧に模倣したデニーロには脱帽だ。
それを見るデニーロの好きな女リアクションは、全然笑っていなくて、日常にいたさえない男がテレビの人気番組に出たことへの驚きすらない。テレビの内容から先はデニーロの妄想でした、というオチかと思ったら、刑務所で書いた自伝がベストセラーになり、出所後にテレビの看板番組のオープニングで幕切れとなる。なんでこんなアメリカン・ドリーム的なお話にしたのかなぁ……。どうもうまく行きすぎな気がして、まるで子供向け作品のような気がしたのが不満だった。もしかすると、そのへんの、本作での諸々の納得いかなかった要素を変更したのが『ジョーカー』で、だからこそ夢オチの可能性を残したのかもしれない。