思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

めまい


☆☆☆★

全然記憶になかったが、どうも観たことあるらしい。ラストシークエンスに覚えがあった。
原題は『VERTIGO』。
ヒッチコックの名作とされているらしく、期待したのだが、全然だった。
相棒が犯人を追っている際に屋根から落ちたのを目の前で見たことで高所恐怖症になった導入は面白い。幼なじみで、大学卒業後あたりにプロポーズもしたかされたかした、ファッションデザイナーの仕事場での会話も悪くない。
そこから、旧友の妻の尾行、となってからが退屈。
美術館の絵に描かれている女の生まれ変わりだと信じている。そんなことがあるのか? という、いわゆる島田荘司本格ミステリー。そういえば同作者に『眩暈』という同名(読み)の新本格ミステリーを読んだが、あまり関係はなさそう。
主人公のおじさんはまあまあだが、ヒロイン女優は、私的には全然見惚れなかったなぁ。眉毛描いてるのバレバレだし。
冒頭の屋根ぶら下がりや、螺旋階段のトラックバックandズームの不思議な画面は格好良かったし、実に的確だと思ったが。
幼なじみの部屋のシーンなどは、室内も窓の外もシャープすぎて、まるで演劇の舞台を撮影しているかのようだった(窓の外にはピントのあった風景写真を貼ってるようだった)。

以下ネタバレ

主人公が高所恐怖症であるの利用して、時計台に女が駆け上がって、主人公がよちよち上がって来る間に身代わりの死体を突き落とす、というのは社会派ミステリーとしてはありがちなトリック。まあ、日本の松本清張なんかより数十年も前だから、比べることじたいが無意味だけど。
早送りで観たから、繊細な二人の感情描写やその変化は見逃しているかもしれないが、女(旧友の
妻、と見せかけた愛人)に主人公が惚れるのはキモいけどありえるとしても、女のほうも、いくら自分の身を気にかけてくれるとはいえ、相思相愛になるのは、なんかなぁ……。
ラストシーンで、主人公から、見破ったトリックを告げられて女が殺人現場である時計塔から身を投げたら、わずか2、3秒後に、シスターが鐘を鳴らしたのは笑えた(^^;)
周囲の人に異常を知らせるためだとしたらおかしくないが、どう見ても「哀悼の意」って感じだったから。