思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

現代ヤクザの意気地と修羅場


宮﨑学
☆☆☆☆
双葉社

多数のヤクザに取材して、その実態を明らかにしてくれる興味深い本なのだが……。暴対法はともかく、暴力団排除条例の異常さは、本書を読めば改めて知ることができる。憲法で保証されている、生存権すら無視したもの。自称人権派の言論人や政治家、マスゴミは、憲法違反だ! と叫ぶべきもの。
本書を読めば、社会に行き場がない人たちを擬似家族(親)的な魅力で束ねるのが任侠/ヤクザであり、カタギには被害を与えないもの、ということがわかる……のだが……。
本書の最大の問題は、ヤクザのシノギについて書かれていないこと。社会から締め出された者たちが、どうやって月数万から数百万もの上納金を払えるのか。それを抜かせば、ヤクザ肯定論になって当然。ただし、暴排条例によって、完全に裏金、違法ビジネス、麻薬などの犯罪行為でしか組織を存続、すなわち生きるための金を稼げなくなったのは、完全に逆効果。これを決めた連中は、頭がお花畑であるか、本書にあるように、犯罪をより深く広まることで、警察の影響力と資金を増やそうとする連中の、思惑が一致した結果。ヤクザからあぶれた半グレによる犯罪(麻薬や暴行、殺人など)に遭う一般人こそ最大の被害者なのだが……。

「暴対法(略)結社の自由を認めた憲法に違反している」

「中国地方にある組織の幹部は、こう指摘する「景気は良くならないのに、消費税だけは上げられ、さらにイジメや自殺の多発など暗いニュースばかりです。これでは国民の気が荒んでくるのも当然でしょう。自分の不満のはけ口としてターゲットに対するイジメや排除を続けることが横行するのも無理ないでしょう」
というが、実に鋭い。経済評論家の三橋貴明が指摘している日本の問題と同じ結論と言っても過言ではない。

「三代目山口組組長・田岡一雄氏(略)は、「うちに来るのは皆、手のつけられない極道者ばかりだ。それでも、よそでは100悪いことをするところを、うちに来ると30くらいに押さえられる。」
なるほど、ヤクザの効能(?)を端的に表した説明と言えるかもしれない。

「「ヤクザにしかなれない人間」が社会に少なからず存在することを無視して暴排が進むられていることは、「異常な社会」の到来と言うしかない。」

「殺人事件(略)のうち約半数が実親族による殺し合いであり、ヤクザによる事件はほとんど起こっていない。」