思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

フロッグ

☆☆☆★

ケーブルテレビの解説中の「ヘレン・ハント主演の極上ミステリー」という部分に引っかかって観る。
いつまで経っても主演女優が出てこないなぁ・・・と思ったら、はたと気がついた。ローラ・ダーンと勘違いしてたんだね(^_^;)ゞ
ヘレン・ハントといえば私的には『ツイスター』とかに主演している人で、わりと好きなタイプ。なのだが、本作では70歳? と言うくらいしょぼしょぼな口周り(実際には撮影当時55歳くらいか)。おまけに作中では高校くらいの息子がいる設定なので、40歳後半? なのでかなり違和感があった・
さらに輪をかけて、物語上では不倫をしていると言うことで、いくら精神科医か心理学者とはいえ、全然モテそうにないんだもん。
まあ、その辺は個人的な好みでもあるので置いておくとして、本作はジャンルが見えないのが特徴。
最初は『フォーガットン』みたいな映画(ネタバレになるのでジャンルは書かない)かとも思わせて、次には家の中で怪奇現象が起こるので、幽霊ものかとも思わせる。次には不倫相手の幼なじみ(単なる学校のクラスメイト?)が訪ねてきたら、それが家の中で死体になっている、と言う『プリズナーズ』のようなクライムサスペンスかと言う転調を見せる。
ところが、約半分である40分ほど経過した後で、大きなツイストがある。
それだけでも映画としては十分なネタなのだが、そこから終盤に向けてさらなるどんでん返しがある。
ただし、これ、普通に推理小説としてみると、良作の証拠、とも言える構成なのだが、本作に置いてはちょっと手放しでは首肯できなかった。
原題は「I SEE YOU」。その意味を書くとネタバレになるので、後述。
ネタバレの前に、ぜひ、触れておかなければならないのは、撮影の素晴らしさ。凝ったアングル、ピントのシャープさ、夜の暗さと、その中に浮かび上がる車のライト、そして非日常的なアングルなど、何かある、と言う雰囲気もプンプンにありつつ、観ているだけでも重厚な映画じゃないかと感じさせてくれる。
後、これまた私的な感想として、主人公の父親が刑事なのだが、その上司が黒人女性という配役。でも、全然上司に感じられない。平巡査というか、完全に下っ端の刑事にしか見えなかったけど。

以下ネタバレ

前述の見事な撮影画面が、40分経つと、突然スマホ撮影みたいな画面に変わる。何が起こったのかといえば、素人のユーチューブ自撮りみたいな体裁になるのだ。要するに、数々の怪奇現象やホラー的な出来事は、密かに天井裏に忍び込んでいた盗人がやっていた
であり、「フロッグ」と言うのは作中に出てくる「フロッギング」と言う単語から。カエルのように、次々に他人の家に忍び込んで、バレないように数日で他の家にジャンプするように転居(?)するから。ただ、劇中の綴りは「frog」ではなく「phloging」(造語)に見えたんだけど、勘違いかなぁ?
要するに、「幽霊」サイドの視点から前半の怪奇現象を説明する。『カメラを止めるな!』と同様の構造なのだが、最大の問題は、それが長すぎること。大体全部の伏線を回収するのだが、それが『カメラを止めるな!』とは全然違って、全く面白くない(笑えないし、意外性もない)のだ。忍び込んだやつがいました、と言う説明だけで、数分もあれば十分なのに、20分くらいやってないかい?
ただ、そのままではなく、連続少年誘拐犯は主人公の父親の方でした、と言うオチへのミスリードでもあるので、しょうがないのかもしれないのだが。
ただ、先にも書いたように、それだけツイストがありながらミステリーとして驚きがなかったのは、刑事としての行動にリアリティがなかったから。警察の捜査、主人公の行動や、相棒がやってきたところなど、どれもダメダメやん。主人公の父親が、すぐ警察に通報しなかったのは犯人だったから、というのだけは一応脚本上納得はできたが。

2019年 イギリス