思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

鶴屋南北の殺人

芦辺拓
☆☆☆★
原書房

鶴屋南北をテーマにした歴史ミステリ。彼の、誰も知らない台本が発見され、それにまつわる連続殺人事件が起きる。歴史好きには、現代の殺人なんていらんから、そのぶんコンパクトかつ歴史の謎で直球勝負してや……という欲求不満はお約束。
ことに本作では、あとがきにもあるように、「犯人のなりてがいなくなってからが勝負」というフーダニットを(そんなのは普通の現代本格でやってよ、と思うのだが)趣向にしたために、逆に犯人は誰でもよくなる、というツイストだけを狙ったミステリーの悪癖に陥っている。
よく知られている鶴屋南北は三世だとか、江戸の演劇事情は分かったのだが……。
出てくる元官僚が、期せずして前川をモデルにしているように見えたり、妙に今年の時事ネタが裂けて見えるのが面白い。執筆時期からすると、シンクロニシティに過ぎないと思うのだが……。

以下、ネタバレ

冒頭に大きな仕掛けがあるのだが、だから何? としか思えないんだよなぁ。本筋とはほぼ無関係だし。
また、本作の創作芝居が何を表しているのか、がある意味では過去編の犯人なのだが、これは次に挙げる作品の、愛読者ならすぐに分かる。
巻末の参考文献には入っていないが、『風雲児たち』だ。まさしく悪役として描かれているので、ネタバレになるから敢えてはずしたあのか、漫画差別なのか、はたまたマジで知らなかったのか……。