思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』☆☆☆★

事実を元にしたフィクション、と言うやつかな。
とりあえず三島由紀夫の自決に至る経緯、と言うのを知りたかった。とりわけ市ヶ谷に入ってからを。
本作では、実際のニュースフィルムを使って、いかに当時は左翼(コミンテルン?)の暴力革命が日本中を席巻していて、半分内乱みたいな状態であったかが、よくわかるようになっている。これでは、三島由紀夫自衛隊の決起、または憲法を改正して自衛隊を国軍にしなければ日本の治安は保てない、と考えても当然と言うべきだろう。東大講堂での学生たちの対話も、それなりに尺をとって再現されている。そこだけはよく知っているので、本作全体の再現度も高そうだ、と言うことが窺える。
本作での不満は、三島の最期の演説時に、聴衆である集められた自衛隊員たちのリアクションが全くないこと。もちろん、史実に則ってヤジが飛び交っているところは再現されてはいるのだが。
このあたりを、「逃げ」だと見るか、監督の意図として、左翼ではない、右翼的なスタンスだと評価するか。おそらく、徴収のリアクション、すなわち自衛隊員の「わかってない」っぷりを描くと、自衛隊批判(=左翼的)だと捉えられてしまうので、それを映さず、三島の絶望的な状況からの自決、と言う流れを強調するための演出だと思った。
割腹後、介錯の後に桜が散る、と言うのはちょっとベタ過ぎるように思ったが。
そもそも左翼はこんな映画観ないと思うので、右翼が見る分には十分面白い映画だと思った。

2012年 日本