思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『零號琴(下)』飛浩隆
☆☆☆☆
ハヤカワ文庫SF

解説によると、本作は原爆を起点にした戦後の日本SFを俯瞰するような作品らしい。最後にそれを読むまでは、『プリキュア』シリーズと『まどかマギカ』を融合したような作品かと思っていた。こと下巻に至っては、戦隊もののパロディっぽい作中の歌劇ならぬ仮劇(作中では旧字)が中心となるので、山田正紀の『ジャグラー』っぽいし、内容自体も山田正紀っぽいなぁ・・・という印象。あとがきでも、実際に作者は割と気楽に読んでほしい、的な感じのことを書いているし。
本作は、ちょっと変というか、無理のある構成になっていて、新人が書いたら絶対に改稿させられること必至である。普通に考えたら最初にこの惑星における仮劇とはどういうものか、というのをさらっと見せるはずなのだ。その上で、来年に迫った500年祭ではもっと凄いことが起こる、ということで脚本や資材の調達に移る、という構成になるはず。それをせず、一発本番としたところが、上述の戦後日本を総括する、という点からくるものだろうか。
右翼の私としては、本作で描かれる結末は、三島由紀夫的な「空虚で金儲けだけを考える戦後日本人」を体現したようなものだと理解できるのだが・・・。左翼的に見れば、大東亜戦争侵略戦争であるから、民族が滅ぶくらいの贖罪をすべき、となるのだろうか??