思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

持続可能な魂の利用

松田青子
☆☆★
中央公論新社

女性視点のジェンダーSF/ミステリー。完全にいわゆるリベラル/左翼の立場で、右翼の『第四の権力』とは対照的。
右翼としての私の感想は後回しにさて、中立的に評論するなら、中盤までは、色々視点を変えた構成が最近の広義のミステリーらしく、そこそこ楽しめる。
が、ラストの結論は、いささか強引というか、作者の政治的主張に飛びつき過ぎる。『世界征服』とか『史上最強の内閣』を見習って。
また、真ん中、という点では、第二部は、男視点にするべきなのだが……。まあ、そこは帰国子女らしいってことで、作者のウリだろうから、不問としよう。
また、左右関係なく、「おじさん」を隔離する、というのはリアリティに欠ける。作中では、年齢に関係ない、と書いているので、要するに男全員ってこと?
子孫の問題は科学・SF的には説明不足だが、一応小説的には解決されているが、じゃあジェンダーの根拠は? とか、ツッコミたいポイントはいくつもある。
後は、本作はアイドル論小説でもあるが、男性視点がないのはまあいいとしても、そんなアイドル業界に自分から進んで入る女性たちの視点が全くない。それこそアイドルを商品としてしか見ていなくないか?
男の制服は何なんだ? 男性アイドルに制服がいないのは何故? とかね。
あとは、「おじさん」が仕切る世の中の仕組みをなくせば万事解決、というのも幼稚すぎる。
結局は、帰国子女の中学生が書いたような小説なのだ。
純粋にSFとして見れば、ラストに飛躍するので、女性/左翼SFファンには、受けが良さそうな作品だが。