思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

残酷ドラゴン

残酷ドラゴン 血斗竜門の宿
☆☆☆☆


アクション(カンフー)映画の古典として観ようと思ったのだが、ちょっと意外な展開を遂げたのでした(・д・)
この映画、少なくとも現在の視点では、アクション映画としては全く面白くなかった。動きも「よっ」「とっ」というドリフのコントみたいな感じだし、動き自体も、ごく一部にトランポリンを使った飛び降りカットがあったりするが、逆にそれが浮いている、という感じでチグハグだ。
キャストも、私的にはブルース・リー以前なので知っている人は皆無。
じゃあ、何が☆☆☆☆なのかというと、画面の決まり具合だ。
ほとんど全カット、構図が決まりまくっていて、緊張感が全く衰えないのだ。アニメ的に言えば、絵コンテの設計と、レイアウトが完璧、ということになる。
ロングショットは支那大陸のスケールの大きさと、その中で歩く人物の捉え方が絶妙だし、いわゆるロングショットでも、建物や樹木の配置と、人物が遠近左右満遍なく配置されている、おまけにそこにカットインしてくるなど、思わず唸るカットが続出。絵コンテの切り方のお手本としても使えるくらい素晴らしいもの。
ちなみに、タイトルがビミョーだが、別に残酷なシーンがあるわけでも、ドラゴンらしき登場人物がいるわけでもない。いわゆる『ドラゴン・イン』(学生時代に観たので、感想はない)の周辺で起こった逃亡犯を逃すための戦いを描いたものだ。
ちなみに、本作で面白いのは、最初はクーデターで都を追われた人たちを描く逃亡劇かと思いきや、宿に舞台が移ると、流離の剣客と、庶民的な剣士兄妹の物語にシフトすることだ。そこへ追手である東尚の部隊が来るのだが、後からくる上官である宦官まで、彼らも命に従っているだけで、どちらも悪人とは言い切れないことだ。
ということで、本作は物語としても、アクション映画としてもイマイチだが、画面設計だけが突出して素晴らしい、という実に奇妙なアンバランスの作品。

余談ながら、本作の冒頭で流れる劇伴(というかブリッジ?)が、『ワンスアポンアタイム・イン・チャイナ 天地大乱』中盤での教祖が登場するシーンの音楽と同じものであることにびっくりした。これは京劇の代表的な曲なのか、『天地大乱』が本作をオマージュしたのか、どっち??