思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ブルータル・ジャスティス』☆☆☆★

確か宇多丸師匠が「なんてことない掛け合い会話が絶品」だと絶賛してた気がするので期待して観た。
画面というか撮影というのかがしっかりしているから、特に何も起きないようなシーンやカットでも間が持つのが素晴らしいところ。映画のテンポとして考えれば、どのシーンも明らかに長すぎるんだけど。
ここでシーンと書いたのは、例えば終盤に倉庫の鍵を開けるシーンがあるのだが、錠前を2つ開けるだけなのに、カメラを3台くらい切り替えて、数十秒も尺を使うのだ。
2時間半以上あるけど、クライムアクションとして考えれば、本作に描かれているプロットは、十分2時間に納められる。なにしろ、やりすぎ刑事が休職中に、銀行強盗を襲って金を奪う、というだけの話なのだ。80年代のエクスペンダブル映画なら、90分で済むくらい。
そこまでは張り込み中の、どうでも良さげな会話とか、そんなのばかり。
もちろん、その辺が二人の関係性を表現していて、効果をあげてはいるのだが。
メルギブの相棒の方は、観ながらずっと誰かに似ていると思っていたが、終盤に気がついた。デビット伊東(^_^;) 登場人物は少ないので、見分けがつかない、なんてことはないのは助かるけど。
冒頭は、黒人が出所してきた、というところから話が始まるのに、どうも主役はメル・ギブソン。黒人が犯人グループの一味だと分かるのは、映画の中盤を過ぎてからなのだ。さらに、中盤になって、なぜか「誰あんた?」というOLが出社するのしないの、という話が描かれて、めちゃ困惑するのだが、これが本作のメインとなる強盗事件の起きる銀行の関係者なのだ。ところが、そうか、彼女が人質となって、最後にメルギブが犯人をやっつける際のキーになるんやな、と思ったら、強盗侵入そうそう、真っ先に殺されてしまう。
じゃあ人質を全員殺すサイコまたは極悪非道な犯人なのかと思いきや、逃走に連れてゆく女の人質は別の人、というのがよくわからん。でもまあ、私がよくいう「映画的なご都合主義」ではない、先が読めない人物配置。リアリティがある、とは言える。
なにしろ、よくある「犯人に渡さないように鍵を飲み込む」という行為を行った人物に対して、そいつを殺して、躊躇わずに腹を裂いて胃から取り出すんだから。おまけに「肝臓を傷つけるな。黒人のは特に臭い」的なセリフを挟んだり。
あとは、人質はトイレどうするんだ? と思ったら、それに対する回答もちゃんとある。
本作は、どういう映画かと言われると説明に困るが、スタイリッシュではない、リアリティあるアメリカのノワール、という感じか。
映画そのものは、メルギブ力で、なんてことないステディの長回しカットでも観られてしまう。
相棒がちょくちょく口に出す「アンチョビ」ってセリフ、何の説明もないけど、要するに「アッチョンプリケ」みたいなこと?(^_^;)

2018年 アメリカ・カナダ