思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

地獄でなぜ悪い』☆☆☆★

園子温監督作品。最初は、映画バカの大学生仲良しグループが、夢を諦めきれずにいる物語と、ヤクザの娘で、子役として一発当てたが、母親が抗争で刑務所に入ったのでグレた(ヤクザの娘がグレても、真人間になるわけではない(^_^;))物語と、2つの物語がある。
それが交錯するのが、10年の刑期を終えて、母親が出所してくる時に、娘が主演の映画ができていることだけを楽しみしていることを不便に思った夫である組長が、娘のカレが監督であると嘘を言ったことを真に受けて、娘が主演の映画を自分たちで撮ることにする。なんだかんだで、仲良し映画好きがそれを撮ることになる、という話。『スローな武士にしてくれ』や『カメラを止めるな!』以上に非現実的な設定である。要するにコメディ映画で、その中にリアルというか、過剰なヤクザ映画、バイオレンス、スプラッター描写が入っているだけの作品なのだ。
冒頭の、子役が、真っ赤な血の海となったフローリングをスライディングしたり、障子に真っ赤な血が飛び散ったり、というあたりはまだ映像他人して許容できるが、首が文字通り飛んだり、おまけに首が飛んだ後にピースサインを出したり、挙げ句の果てには頭に刀が刺さっているのに動き回ったり、完全にお笑いコントのレベル。一言でいえば、スラップスティック・コメディ。
ヤクザの殴り込みを映画で撮影するとか、もうありえない。しかもドキュメントではなく、カメラを止めたり、演技指導したりしてる。この辺でコントだと見方を切り替えられるかが、本作を楽しめるかどうかの分かれ目だろう。
おまけに殴り込みシーンでは、劇伴も『キル・ビル』のパロディ的になっていて、ある種の同作の劣化コピーと言えなくもない(´д`) 例えるなら、乱暴な話、『血まみれスケバンチェーンソー』を大真面目に作ったらこんな感じになるかも。