思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

二重殺人トライアングル

由良三郎
☆☆☆★
光文社カッパ・ノベルス

3づくしのミステリーということで、大学生バンドがメイン。バンド名が三角関数で、メンバーのあだ名が、本名をもじってのサイン、コサイン、タンジェントときた。
バンド演奏中に、首吊り自殺のパフォーマンスをしたが(作中で理由は書いているが、いくらなんでも強引すぎてリアリティに欠ける)、数日前と当日にも、探偵役の助教授が命綱となるセット(マジックのタネ)の鎖を改めたにも関わらず、首吊りが起こってしまう。おまけに、ほぼ同時に同じバンドのもうひとりが死亡し、死因はどうやら微小の毒物らしい。探偵役を目撃者にした不可能殺人である。
それに加えて、3づくし(これは作中で宣言されているわけではなく、解説と、それを抜粋した裏表紙アオリにあるだけだが)なので、当然、3人目の死体と、三角関係が出てこなければおかしいでしょ? となるのはちと出版社ネタバレでは?
探偵役の主人公に、警察が聞き込みにまで同行させるとか、ご都合主義な点はあるが、まあそのへんはトリック重視ということで見逃そう。
2つの殺人トリックについては、片方は医学畑出身の作者らしいもので、現在でも十分通用すると思う。ハウダニットというよりも、具体的な薬品の選び方、という意味において。
もう片方は、80年代末における最新技術、というところで時代を感じさせるものになっていて、確かに科学的かつ論理的だが、二千年代にこのトリックを使われたら、なにそれ? と呆れられるだろうなぁ……。
ちなみに、フーダニットという意味においては、かなり優しい類だと思う。動機というか、背景についてはひとひねりあったのはちょっとだけ意外だったけど、どうでもよいツイストかも(^^;)