思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『マインド・ゲーム』

☆☆☆★

ぶっとんだ作画、ぶっとんだストーリー、ぶっとんだ声優の演技、の三拍子揃った怪作。
また、何がすごいって、それが長編映画として作られた、ということ。『アニマトリックス』や『パトレイバー リブート』が入っていたなんとか映画祭みたいに短編オムニバスとかなら観るスタイルだが。
作画面。基本的に線も不安定だし、表情も多種多様。時折り、その声優であり、モデルとなった吉本芸人の顔の写真に線を足したようなカットもある。
パースやカメラアングル(レイアウト)も、実に極端なものが多い。実際に監督が関わっているいくつかの映画版『クレヨンしんちゃん』のクライマックスのアクションシーンでよく見るスタイル。それが(全シーンではないが)ほぼ全編に渡るのだ。
先にモデルの吉本芸人、と書いたが、普通ならプロの声優以外は嫌悪派の私だが、本作ではほとんど気にならない。ビジュアルと物語が、普通のアニメの文法からぶっとんでいるので、声も普通じゃない。それにしても本作のスタイルに馴染んでいるので、もしかしてプレスコかな? 写真を、使用したカット以外は、モデルだと分からないほどアニメ的にデフォルメされたキャラデザインではあるが。
物語としては、現実逃避もの? 売れない漫画家である主人公(声・今田耕司)が、初恋の女と再開して彼女の実家の焼き鳥屋に行ったら、借金取りに巻きぞえで殺されるが、神様から逃げ出して、生き返ったら、彼女を連れてヤクザ達から逃げる。逃げた先は、巨大クジラの胃の中。そこには『ジョジョ』の『鉄塔に住もう』ばりになんでもある場所に30年住んでいる老人がいた。そこでのガジェットは楽しいところではある。文字通り、現実逃避の象徴だが、そこから現実と向き合うイコールクジラから出たところで終わり。そこで、本作はある種のタイムリープパラレルワールドものでもある。また、タイトルにある通り、ある意味での全ては妄想、というテーマも。主人公が死んだ後の妄想かとも思わせる。
本作いちばんの見所は、主人公が、死んで、神様と話すシーン。神様は、あくまでも人間の主観であることを表現するため、神様の見た目が文字通りコロコロと変わるのだ。声も男、女と変わり続ける。これは、後に『クレヨンしんちゃん 逆襲のロボとーちゃん』でコンパニオンロボの表情がコロコロ変わるのと同じ手法。面白いシーンであると同時に、哲学的な思想でもある。またこれが長いんだ(^^;)普通なら、せいぜい1分くらいだと思うが、2、3分はあったんじゃないかな?
こんな感じで、何もかも長いから、長編になっているんだろう。しかしながら、早送りできないドラッガーなある種の魅力があるのも確か。キャラデザインが好みではないので、再見はしないが……。原作つきの『夜は短し歩けよ乙女』は見通せなかったのに、本作は最後まで観た、というのは、作家性が全開されたか、原作にある意味、束縛があるか、の違いか?