思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ゴースト・イン・ザ・シェル

☆☆★

最初は押井守のアニメ映画から入って、『イノセンス』を経て、原作マンガまで読んだ私からすると、ハリウッド映画になったらこういう仕上がりになるよな、という予想通りの内容。
読者に媚びることなく、設定的にも作画的にも情報を詰め込んだマンガ、それを取捨選択しつつも、押井節でまとめたアニメ映画版そんなオタクエリートに向けた作品を、それを全世界のオタク弱者に向けたハリウッド映画にするとなれば、さらにヌルい映画になることは火を見るより明らか。
作品を期待も偏見もなしに捉えれば、C級ストーリーの映画としては凝りに凝ったものになっている、といえる。立ち位置としては『メグ ザ・モンスター』に近いかも。
全くの別物になってもおかしくなかったところを、押井映画へのオマージュを入れつつ(ホントなら、それを原作に沿った映画化、というのだが、あくまで表面的にしか見えない)、CGメガ盛りで、観客に「CGには金かけてまっせ」と言い訳にも見えるものに仕上げた。
マンガの元ネタが『ブレードランナー』がなのだが、本作の都市も ビジュアルは、一周回ってそれをさらに派手にした感じ。『ブレードランナー2046』よりもたけしが出ていることも相まって、『J M』に近い雰囲気だが。
表面的にハリウッドの大金をかけたCGでブラッシュアップした映像が見られる、という意味では、『アヴァロン』などの押井守映画など、幅広く拾ってきている。
純粋に映画として良かったと思ったシーンは、カウンタックみたいなバトーの車のデザイン。ジュリエット・ビノシュ暗殺のために、ごみ収集車が突っ込む自動車事故を、後部座席に座る被害者視点で描いたカット。
原作ファンにはツッコミどころは満載だが、これまた純粋に(むしろ理系者として?)いち映画としてツッコミたかったのが、押井守映画にもあった、ゴミ収集作業員との水溜りバトル。光学迷彩してても、近くにいたら、靴の形に水が凹んでるからバレバレになるはずでしょ? いや、背後の景色を投影するからいいのか。でも、水面からの屈折は相手の距離によってことなるから、やっぱり、水面からガラスのコップを中に水を入れないように気をつけて突っ込んだのと同じ見た目になるはず。
川井憲次のテーマ曲は、最初は押井守映画と同じく、本作でもそれを踏襲したオープニングに流すと言われていたのに、結局はエンドロールの前半だけに流れる。前半だけなのは、元々オープニング用の尺として納品したものを長大なエンドロールに転用したから?