思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

孤狼の血
☆☆☆☆

映画館で予告編は見ていて、『アウトレイジ』みたいな内容かと思っていたら、『仁義なき戦い』みたいな感じで、ルックもナレーションも昔の東映映画みたいにしていた。ちょっとよそのレビューを見たが、別の映画のリメイク的な側面もあるらしい。ヤクザも、それを追う刑事もほとんど同じゴロツキみたいで、馳星周ノワール小説みたいでもある。ちょっとネタバレかもしれないが、クライマックスは韓国映画『アシュラ』っぽくもあった。
広島弁が、脚本としては正しいのだろうが、イントネーションがヘンなところが満載で、関西人としては終始、気になった。
サスペンス、ミステリーとしての側面もあり、忘れた頃に伏線回収があって、それがまた映画を豊潤にしている(詳しくは後述)。
シンケンレッドの体当たり演技が評判らしいが、私的には別に普通というか、逆に、本作のノワールを映画的に表現するには不十分だと思った。前述の『アシュラ』なんかと比べたら。江口洋介なんかは良かったと思うが。
役者陣でいえば、デカレッドが出て来た時には「これから本格的に捜査が始まるのか?」と思ったが(^_^;)、どんな映画にも出ている男、田口トモロヲが髭面で出てくると、どうにも笑けてしまう。
笑けてしまうと言えば、真面目ながら、ギャグにしか思えないシーンもあって、意図的な「本人は悲劇、俯瞰では喜劇」の演出なのか、考えてしまったり。
アウトロー映画ではエロ・グロ・暴力が3大要素だが、エロは直接的なセックスシーンは意外となくて、終盤に遊女のおっぱいが映るだけ、という80年代のテレビレベル。グロは、腐乱仕掛け屍体もまあまあ(モロに映さないと思わせてからのドーンは巧い・・・のか?)、と思っていたら、ラストの組長と役所広司の特殊メイクは良かった。特に役所広司
暴力は韓国映画に負けておらず、真珠を取り出すシーンはどっちらけだったが、指を切るとか、首に日本刀を刺すあたりは頑張っていた。血のりは、深みがないのだが、ラストのトイレの組長は韓国映画ばりに黒っぽくて良かった。

余談。アサヒ・スーパードライがこの時代にあるのはおかしい?! と思っていたのだが、調べたら実は62年に発売されていた。

以下、ネタバレ。

この手の日本映画は、悪徳刑事と思わせて実はいいやつでした・・・というのばかりで食傷していて、本作は違う!
と思って観ていたのに、最後はやっぱりそうだったのが減点ポイント。ただし、それを補ってあまりあるほどのヤラレっぷりだったので減点は☆半分くらい。逆に白目を剥いた迫真の屍体演技(メイク)で加点されたくらいだ。
ミステリーとしては、最初はただの青い理想主義刑事と思わせたシンケンレッドが実は本署から内定任務を帯びていたり、実はそれも署長たちが役所広司が裏社会との癒着を握っているのを揉み消すための陰謀であると分かったりする二転三転構造。
ダメ押しは、ケガした時にたまたま寄った薬局の看板娘とシンケンレッドが良い仲になったのも、青二才だったシンケンレッドを慰めるために役所広司が頼んでいた、というオチだ。これも、役所広司がそれ以外でもいろんなところでいろんな人に頼み事をしたり、スナックのママが美人局をしたりする、森の中に隠したことであからさまな伏線であることを感じさせない脚本が巧い。