深木章子
☆☆★
角川書店
いわゆる地の文がないスタイル。手記、メール、供述調書、陳述書、手紙そして新聞記事だけで構成されている。どれも、現実のそれにしては小説的な装飾が多いのは、このて小説のお約束だ。
何より、宮部みゆきに代表されるように、プロットとしては不要なディテールや感情表現が多すぎるのにうんざりさせられる。
プロットだけ見れば、問題点も整理してから進む実質的な解決編から読んでもいいほどだ。
そのミステリとしてのメイントリックだが、作者の既作とだいたい同じで、推理が当たらなくても、驚きはない。本作の眼目は動機だと言えるのではあるが、それにしてもエピローグまで6年を開ける意味が分からなかった。もうちょっとこのプロットを最大限に活かす構成があるんじゃないかなぁ。地の文があってもいいんじゃないか、というところまで戻って再検討すべきでは?