思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

高校入試

『高校入試』湊かなえ
☆☆☆★
角川書店

教師の立場から高校入試の現場を描いたもの。その背後には、ネットの裏サイトで入試をメチャクチャにしようという陰謀が……。
本作では、短い章立てで、視点人物が次々に変わること、裏サイトの書き込みが、チャットばりに刻々となされるのが特徴。
登場人物たちのリアルというか、日常会話が多いところは宮部みゆき、視点人物がリアルタイム的に変わるところは清涼院流水『キャラねっと』などを思わせる。
読書は、何かが起こることは分かっているので、いちいち日常会話を読まされても、かったるいだけ。宮部みゆきが好きな人はいいだろうが……。
トラブルが発生してからも、展開は遅い。もちろん、これくらいはっきりしないのがリアルなのは分かるが、ミステリーとしては冗長。380ページもあるが、200ページでプロット消化的には十分だろう。
それでいて、犯人の動機は、青年の主張レベルで、これだけの手間をかけて読書が読む、対費用効果があるとは思えなかった。

「人間にはもともと能力の差があることを、誰もが認めなきゃならんのだ。その中でそのものなりに努力すればいい。そして、そこ努力は何らかの形で認められたり、賞賛されるべきだとも思う。(略)親が家で褒めてやりゃいい。自分で自分を称えてみればいい。」
これは犯人の動機(ネタバレ)ではない。本作で高校入試というテーマを描いたのは、これが言いたかっただけ。

いちおう、ミステリーとしては、割と凝ったことをやってはいるんだけど、冗長さが全てを台無しにしている気がするなぁ……。