思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『殺意の構図 探偵の依頼人』深木章子
☆☆☆★
光文社

『鬼畜の家』よろしく、弁護士の元に、弁護の依頼が来るところから始まる。友人の紹介で、実父の放火殺人の疑いで逮捕された男の弁護をすることになった弁護士だが、被告の主張には明らかにおかしいところが……。
公判中に新事実が発覚し、アリバイが成立したことで無罪となる。
ところが、被告の妻が公判中に別荘で死亡したことに続き、被告も釈放後に死亡する。
結果的には、過去の人間関係という昔話が多いことによる時間の経過もあって、エピローグの時点で、登場人物表にある13人中、6人しか生きていないという大量殺戮っぷり。
中盤からは、視点人物を変えて事件を振り替えるという構成で、『白光』か『プリズム』的なある種の多重解決ものと思ったが、最後にはちゃんと1つの真相に帰着する。
ただし、本格としては、ある程度常識の範囲内かもしれないとは言え、ある種の専門知識が決め手になること、後だし的な事実が出てくるので、本格としての投げられ感は減点された。
三作めを読み終えたが、この作者、古き良き、一族の相続をめぐる連続殺人ものを、自身の経験を活かした弁護士ものとして再構成したいのだろう。だからこそ、異常に人間関係の愛憎劇のパートが多いのだ。

以下、ネタバレ

真犯人像や、シリーズ探偵の意外な過去のエピソードはなかなかニヤリとさせられる仕掛けだった。
まあ、一人の真犯人というより、複数の思惑が交錯し、誤解がかばい合いを生む、というのが本作の醍醐味であり、(好き嫌いの分かれそうな)ややこしいところ。私的には、小説としても嫌いではない。最初に挙げた貫井ちゃんテイストもあるかな。