思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ブラックブック』

☆☆☆☆

バーホーベン監督作品という以外にほとんど予備知識なく観たが、面白かった。基本は『アンネの日記』と『シンドラーのリスト』を合わせたようなユダヤ人ものの、重い内容ではある。だが、悲惨な状況ながらもそれに負けない自然な女の強さがベースにあるので、過剰に打ちのめされることがない。逆に、過剰に感情移入もない。だが、そこはスパイ映画的なサスペンスや、レジスタンス作戦がうまくいくかどうか、というハラハラ感で退屈しない。ちなみに、タイトルは、内通者が持っていた手帳で、『シンドラーのリスト』と同じ意味。
本作のバーホーベンらしさは、二面性、あるいは単純な善悪の否定だ。主人公が情報を得るために取り入ろうとしたナチス大尉は切手集めが趣味で、家族をなくしていて、しかも主人公がユダヤ人であることを知りつつも彼女を売らない。主人公の直接のカタキであるナチス士官は音楽的センスがあるし、逆にレジスタンスの仲間も、単純な正義感だけの善人ではない。ドイツ敗戦後も、ナチスに協力した人々をナチスばりにいじめたりする描写があったりする。