思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『fly play』霞流一
☆☆☆☆

なんともネタバレなしで説明しづらい内容だ。
作中のテーマも演劇/舞台だが、記述方式自体もそのものではないにせよ、脚本テイストの簡潔な文体。会話文も辻真先っぽいところもあるが、舞台演劇の会話のやりとりをイメージすると入り込みやすいだろう。
構成としては、誰かが誰かを騙す為の台本と演技が連鎖していく。その意味では全編が推理合戦とドンデン返しの連続と言っても過言ではない。
とは言え、終盤までは予定調和的に演技で相手を騙す倒叙もののように見えるので、少々まだろっこしい。しかし、その間も軽妙な会話やミステリの蘊蓄で飽きさせないのはさすがだし、この中にも伏線が仕組まれているので、「あれはどうなったの?」とか、人が死んだくせに深刻さが全く感じられない、という不満点も最後には(ある意味では)すっきりする。あくまでも舞台演劇のイメージだから、死者も「殺された役」なだけ、というニュアンスも含まれている。
これ、丸ごと舞台化してほしいなあ。