思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

決定加筆版
『fly play』霞流一
☆☆☆☆

なんともネタバレなしで説明しづらい内容だ。
作中のテーマも演劇/舞台だが、記述方式自体もそのものではないにせよ、脚本テイストの簡潔な文体。会話文も辻真先っぽいところもあるが、舞台演劇の会話のやりとりをイメージすると入り込みやすいだろう。
構成としては、誰かが誰かを騙す為の台本と演技が連鎖していく。その意味では全編が推理合戦とドンデン返しの連続と言っても過言ではない。
とは言え、終盤までは予定調和的に演技で相手を騙す倒叙もののように見えるので、少々まだろっこしい。しかし、その間も軽妙な会話やミステリの蘊蓄で飽きさせないのはさすがだし、この中にも伏線が仕組まれているので、「あれはどうなったの?」とか、人が死んだくせに深刻さが全く感じられない、という不満点も最後には(ある意味では)すっきりする。あくまでも舞台演劇のイメージだから、死者も「殺された役」なだけ、というニュアンスも含まれている。
これ、丸ごと舞台化してほしいなあ。


「「新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー」(略)警察は操作会議で見立て殺人に言及する際、いちいちこの早口言葉を言うんだよ。(略)刑事同士の打ち合わせでもそうだし、取調室で重要参考人に対しても言わなきゃならない。そうした労力は甚大なものさ。(略)捜査陣を疲労困憊させるための見立て殺人なんて前代未聞のトリックじゃないか(略)」「そのトリックによって捜査が行き詰まり、迷宮入りし、完全犯罪が成立(略)」「なんて、あるわきゃない!」」

あと、「、」であるべきところが「、、」になっていた、という単純校正ミスはともかく、漢字の「二」がカタカナの「ニ」になっていた箇所が複数あったのは見過ごせない問題。これはトリックの伏線に違いないと思わされた(`ε´)