『ミクロの決死圏』アイザック・アシモフ著/高橋泰邦訳
☆☆☆☆
原題は『』。
随所にある映画のスチールから、本作が映画に忠実なストーリーであることが分かるほか、その場所がどういうところか分かる。
ただ、いかんせん五十年くらい前の映画なので、そのセットは仮装大賞レベル。とはいえ、アシモフの描写は、現代のCG技術で作れば実にセンス・オブ・ワンダー溢れるものになったに違いない(リメイクとは言わない。リメイクしたら確実に駄作になるだろうから)。
さすがはアシモフだけあって、人体の生体組織描写はもちろん、量子論的に原子のぼんやりしたところを記述したり、光の波長から、ミクロサイズだとものがはっきり見えないとか、
「縮小につれて時間の感覚が変化する。普通の時間が引き伸ばされたように思われる」
とか、実に隙がない(さすがに縮小か理論そのものはハードSF的に説明できなかったが、映画の設定上、仕方ないところか)。
こうやってみると、『フラックス』ほどではないにしろ、本作は純粋に異世界探検ものとして楽しめる。
ミクロの決死圏 (ハヤカワ文庫 SF 23) アイザック・アシモフ 高橋 泰邦 早川書房 1971-04 |