思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ケンとカズ』☆☆☆★

Youtubeに上がっていたので、てっきり自主制作映画かと思い、それにしてはめちゃくちゃしっかりできてるやん!? と思ったのだが、(低予算ではあるが、クラウドファンディングで)普通に作られた日本映画であった。
街のチンピラであるケンとカズは、麻薬の売人をやりつつ、その資金洗浄元にもなっている町の車の修理工場で働いている。カズの方の学生時代の先輩が小さなヤクザの親分で、そのルート(?)で麻薬の売人をやっているのだ。
その日常を描くノワールというか、若者にとっての、「うまくいかない世の中」もの。
裏社会に首をつ込んでいるので、ケンカだの殺人だの、血の気のあるテーマが色々出てくる。何故かというか、セックス(借金のカタに強姦とか風俗に売り飛ばすとか)は出てこないのだが。
低予算にしては、撮影(照明)とかはしっかりしていて、ルックは格好いい。個人的な好き嫌いもあって、手持ちカメラが多いのがちょっと気にはなったが。使い所としては『仁義なき戦い』みたいな感じで、全く間違っていないのだが。
ケンの悪そうな感じや、カズのチュートリアル徳井みたいな悪くなりきれない感じなど、俳優陣もいい。
ただ、展開として、最後にヤクザ二人に、縛られた裏切り者のケンを殺すことを強要された絶体絶命の状況からカズが逆襲するのは、「ほら言わんこっちゃない」的な展開で、「ナイフ渡すんならもうちょっと離れとけよ」という感じで、あまりにもヤクザ二人が間抜け。

21016年 日本

クレヨンしんちゃん 金矛の勇者


☆☆☆☆

乱暴に言えば、『不思議の国のアリス』プラス『ピーターパン』か。
ラスボスは、ジョーカーがモチーフ。『クレしん』といえばオカマ、なので、まともな男だったことが意外(^^;) 銀河万丈氏の渋いキャラである。左右で黒白分かれているので、あしゅら男爵を連想させるが、左右で人格が違う、ということはない。
……と思っていたら、クライマックスで意外な理由(活躍)があるとは?! しんちゃんが金の剣であっさり一刀両断したと思ったら、半身な生えてきて、白と黒の2人に分かれるのだ。観ている間は気づかなかったが、完全に『エヴァ』の「瞬間、心重ねる」使徒そのものじゃないか?! 完全にパロってるのに、そう感じさせないのはさすが、というべきなのか。
本作でも、日常を侵食してくる演出は素晴らしい。
ピーターパンが実は女の子、というのは舞台で演じているのが女性ということへのパロディだろう。
ちなみに本作では春日部防衛隊は活躍しない、野原家の話となっている。
娯楽作品としてはほぼ文句のつけようのない(だからと言って、大傑作というわけでもない)佳作となっている。
日常を侵食する異世界の描写も、不思議の国のアリスとも、『まどマギ』のよう(先取り?)とも言える、まさに非日常、異常な怖さがある。

ベイビー・わるきゅーれ


☆☆☆☆

ブラックな笑い、舐めてた相手が殺人鬼、ガンアクション、そして本格格闘などが結実した、坂元監督作品の集大成では?
普通っぽい女の子がバリバリにアクションする、という点では『修羅雪姫』、萌え要素というところでは『キック・アス』なんかも近いが、はかなげ、というところから『クローザー』、『チョコレート・ファイター』がいちばん近いのでは? 
終盤の凄惨なまでの迫力あるバトルという盛り上がりは、『ヒメアノール』とか『宮本から君へ』なんかの要素もある。ま、女子高生のプロの殺し屋、という設定からしてリアリティゼロなんだけど(^^;) そのへんの大前提は大ウソで、その中の日常、というあたりが押井守監督のセンスにも近いかも。
よくある、普段は真面目っぽいのに、突然キレるという、ヤクザの親分も笑える(原田龍二似のハンサム)。死体処理屋さんなど、チョイ役に至るまでキャラ立ちしているのも良作のポイント。
ダブルヒロインの片方、『ダーティーペア』ならケイに当たるほうがロングヘアで、舞台『鬼滅の刃』のねづ子役もやってると聞いてそのままだと納得した。
真の主人公はもう片方のまひるだろう。人付き合いは苦手(作中にあるような、コミュ症という言葉はあまり使いたくない)で、バイトは全然できないが、格闘と銃剣は(プロ級というには、プロだから不適当)達人級。バディ要素というか、百合要素もあり、究極のツンデレヒロインでは?(ちょっと違うか(^^;))
そのアクションは、こと近接戦のスピード感ということでは、香港の一流アクションスターとかにも負けていない。『最強殺し屋伝説国岡』のほうは、男同士ということもあり、パワー型の殺陣だったが、本作では、スピーディーに回り込んだりするアクションが中心。
アクション映画として充分な完成度でありながら、日常系としての魅力もある。ある意味、『カメラを止めるな!』ばりにオススメの秀作。

『鯨と斗う男』☆☆☆

東映チャンネル案件。昭和末くらいの作品かと思ったら、占領下のモノクロ映画。でも、特に日中の屋外シーンはシャープな映像で、実際の景色(自分の目で見たカラー)が想像できる。
捕鯨会社の話だから、そりゃ、現在は封印されても仕方ないわなぁ(´д`)(右翼としては、だからこそ上映すべきだと思うけど)
特に冒頭、獲った鯨をテキパキと解体するシーンは、教育映画としても圧巻。(もちろんカットは割っているが)まるで早回しのように鯨がバラバラになり、ちゃんと「余すところなく色々なものに使われている」とナレーションで教えてくれる。
ストーリーだが、主人公が同じということもあって、完全に『ジャコ萬と鉄』だ(^_^;)
あちらでは丹波哲郎が演じているライバルは、本作では腕はたつが非情な銛打ちとして出てくる。ラストで、実は彼もいい人だったと分かるのだが、完全に故人として演出されるのに、ちゃんと生きている、というのが面白い。

1957年 日本

『最強殺し屋伝説国岡』☆☆☆

『ある用務員』で主人公のカレシ役だったのはこの人だったのか。
闇の殺し屋会社があり、そことフリーの契約をしている国岡という男に密着したドキュメンタリー、という設定のフェイクドキュメンタリー。
良くも悪くも、まるで青年マンガのような設定。というか、これにそっくりの設定のマンガ、絶対あるよね??(詳しくないから知らんけど)
映画としては、殺し屋という非現実な設定を、バイトや若手社員として働く若者のような言動で描いたもの。不条理というか、あからさまにヘンな(いくら何でもありえない)シチュエーションも多く、ほとんどお笑いコントと言えなくもない。特に前半の山場である同業者8人とのシーンは、ふざけすぎてて、引いてしまう(´д`)
ノワールとしては、銃弾の命中率が場面ごとにバラバラだとか、ツッコミどころもあるが、良いシーンもある。あるターゲットを道端にあったスプレー缶だかブロックだかで一発殴っただけで殺すところはリアルっぽくて(?)良かった。
あとは、ライフルの反動でスコープからの衝撃で頭をぶつけるという描写も、一見リアリティの追求っぽいが、プロの殺し屋何だから、そんなことも知らない(プラス、対策・訓練していない)のはおかしいやろ?!
アクションも『ある用務員』で見せたように、この人の持ち味だが、ことフェイク・ドキュメンタリーとしては大いに問題がある。それは、アクションシーンではカットを割って、尚且つ切り返しショットを多用していることだ。これはドキュメンタリーならありえないことで、ここでモロバレ。あとはBGMも、ドキュメンタリーとしてはアクションシーンにつける音楽が格好良すぎ。明かにフィクションとしての選曲である。
本作のクライマックスは、敵の「最強ボディーガード」との路地での一騎討ち。延々と、10分くらいは戦っているかも。『カンフー・ジャングル』ではラスト15分か何かのバトル、とかいう売り出しがされていたが、本作もそれに劣らない。

2019年 日本

『2度目の会話が続きません』野口敬
☆☆☆
サンクチュアリ出版

「意識的に映像を思い浮かべる練習をしていないと、自分に興味のない話、知識のない話の場合には映像化していないことが多いのです。だから、話にリアリティが持てず、余計に興味が持てなくなってしまいます。
 自分に知識のない話の場合には、近いものを想像するようにしてください。」

「ポイントは、語尾を「ねぇ」と伸ばすことです。こうすると語尾に感情が乗りやすくなり、相手のイメージを刺激する効果があります。さらに、「ゆっくり考えて」という気持ちも伝わるので、相手も想像力を働かせるゆとりが持てるのです。」

「会話を覚えておくコツは、できるだけ相手の話を映像化して、自分の感情とつなげながら聞くことです。」

「趣味の話なども大切ですが、仕事で会う方の場合には、相手が今何に力を注いでいるか、どんな課題を持っているかということを話題にした方が話は深まりやすい」

「○○さんも準備がたいへんでしょう」と、会話の主役を相手にしてみましょう。会話は一気に深まります。」

「怒りは感じること、認めることだけでいいのです。人に怒りをぶつける必要はありません。」

「人に興味がわかないのは、「ものごと」に焦点をあてて話を聞いているからです。(略)これからは、その話を想像しながら聞き、相手や他の登場人物が感じていそうな気持ちに焦点をあててみてください。」

「人に好かれる話題って、どんなものだと思いますか?
 それは「カッコ悪いエピソード」です。」

「「いちばん楽しいときって、どんなときですか?」
 こうすると、「趣味は何?」と聞くより、楽しい瞬間を思い出しやすくなります。」

柴田昌治『なんとか会社を変えてやろう』を読む

印象に残ったところ

「同じ問題でも、それぞれの見方や立場で、見えている絵がまったく違っていたりします。」
トヨタ生産方式には、改善のシステムを回していくために、現場の人たちを「困らせる仕組み」が組み込まれていると言われています。(略)根本的な原因を探る習慣が培われ」

「相手を単に正論で非難し、追い詰めるんじゃなくて、相手に手柄を与えるような形での議論が必要」
「仕組みの改革をスムーズに行うためには、「なぜそういう改革が必要なのか」「どういう意味があるのか」といったことをオープンに議論する」
「「生きる」ということ、「豊かな人生とは何なのか」ということを一人ひとりがもう一度、原点に戻って考えていくこと」