思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『人肌孔雀』☆☆☆★

市川雷蔵が主役ということだが、山本富士子とダブル主演と言っていい。山本富士子は時に男装の剣士、時に遊女という感じで、3箇所くらい歌うシーン(劇中で歌っているのと、挿入歌なのと、微妙な感じ)ミュージカル映画的な側面もある。というより昔の娯楽映画は、歌も踊りもアクションもお色気も全部入り、という感じだったのかな。山本富士子が日本舞踊を舞う、というだけのシーンもある(・_・)
市川雷蔵の方は、世捨て人というか、江戸にはいるが、世間に無関心な易者、という役柄。
何が人肌で、誰が孔雀なのかさっぱりわからなかったが、山本富士子が綺麗で格好良かったので、まあいいんじゃないかな(^_^;)
いくらヒーロー/ヒロインとはいえ、遊女の衣装で暗殺者連中の刀と素手で渡り合うのみならず、走って逃げるのに、暗殺者が2、30メートルも離れてから「追え!」って叫ぶ間抜けっぷりはいかがなものか(20メートル逃げるのをボーっと見てたんかいっ!?(´д`))

1959年 日本

おらおらでひとりいぐも


☆☆☆★

いちおう田中裕子ファンとしては、観とくべ、という程度の動機。タイトルは東北弁で、「わたしはひとりで生きるわ」という意味らしい。
本作は、いわば平方に孤独に生きる老人の内面を文字通り描いた人間ドラマ。
それなのに、冒頭に、地球誕生から恐竜などがCGで描かれ、NHKスペシャルかディスカバーチャンネルか? と録画間違えたか? と焦るくらい。
その後は、一軒屋の薄暗い居間で、ひとり夕食を食べる田中裕子。カットが変わると、向かいにはご陽気な4人の男が。はたまた家族の団欒が。これ、男たちは夫が亡くなってから作り出した別人格かイマジナリーフレンドまたは自問自答を可視化したもの。家族は、彼女が昔を思い出している映像を、文字通り目の前に演じて映しているのだ。
子どもたちとも疎遠で、普段会うのは病院の先生、お巡りさん、車のディーラーとか。でも実は疎ましく思っているわけではなかったと分かって、おしまい。まあ、プロットだけみれば凡庸な人情ものだが、夫と死に別れた年寄りの内面・本音をユーモアを交えながら描いた、という意味ではオリジナリティがあるかも。
内面や妄想を登場人物と同じ場所で演じる、というのは低予算映画でよく見る手法のように思うが、それを大女優と普通の予算の映画でやった、という意味でも。

トータル・リコール再


☆☆☆☆

ムービーチャンネルの副音声版。いつもの寺沢ホークらによるもの。
前にも書いたかもしれないが、映画好きはこの映画のここを楽しんでいる、ということが分かるのと、一緒に映画を観る、映画の趣味の合う友人がいない人でも、その楽しい感覚を得られるので、もっと広まってもいいと思う。ヘタクソな新吹き替え版なんか作るより、予算面でも数倍ましでしょ?!
一番驚いたのが、本作が『ターミネーター2』の前年の作品である、ということ。ほぼアナログ特撮で作られているので、SFX映画としてのその差はあまりも大きく感じる。

『火の鳥(12)』

☆☆☆☆

『太陽編(下)』本編における未来編と過去編がこんなふうに結びつくとは、小学生時代には理解できてなかったなぁ(^^;)
まあ言わば未来編はおまけというか、新開誠版『君の名は』のようなねじれた構成で、対照というよりも、エピローグを分割して最初から挿入する、『スタープレックス』みたいな構造といえる。
過去編が、ある意味「日本誕生」といえるもので、太陽信仰イコール日の本という構図に、火の鳥を重ねたところが興味深い。犬上と,敵将韓国(人名である)

『火の鳥(11)』

☆☆☆★

『太陽編(中)』未来のエピソードの比重がふえている。火の鳥教団とも呼ぶべき「光」と、地下に差別されて押し込められるシャドーという、(ディストピア未来ものSFではお馴染みの)設定で、シャドーのスパイが、光教団の御神体である火の鳥を盗むミッションに挑み、失敗する。
飛鳥時代編では、吉野へ移った犬上の元へ、朝廷と仏教神(仏教徒としてはこういう表現は使いたくないが、『虚無戦記』的な感じとして)が押し寄せる。犬上に大和は土着の神々が加勢し、水木しげるを意識していたかどうかは分からないが、まさしく『妖怪大戦争』が繰り広げられる。そのもののけたちのデザインの独創性、デザインラインの完成度には、感服せざるを得ない。

『潜水艦事典』JーSHIPS編集部
☆☆☆★
イカロス出版

魚型水雷すなわち魚雷」

「トライデントDー5LEミサイルは、12000kmと地球の反対側にまで届く射程を持ち、しかも命中精度は半数必中界の半径90から120m」

アメリカ空軍ではSSBNへの連絡中継のためにEー6Bマーキュリーという特殊な機体を運用していて、このEー6Bは飛行中に長さ8kmのアンテナを機体から繰り出して、超長波通信を送る」

アナ


☆☆☆★

リュック・ベッソン監督。リュック・ベッソンが、『アトミック・ブロンド』を観て、「オレもオレも!」となったかどうかは知らないが、モロにそんな映画。
個人的に一番残念なのが、ヒロインが美人じゃないこと(^^;) 世を偲ぶ仮の姿がモデル、という設定にしているくらい、プロポーションは抜群なのだが、いかんせん、顔が『ジョジョリオン』の丈助。出っ歯かつ受け口気味なんだよねえ。ちょうど、この前に観た『クレヨンしんちゃん 踊れ!アミーゴ』のヒロインも受け口だったけど。
ヒロインじたいにはあんまり魅力を感じないけど、そのぶん、スパイ映画としてのミステリー的な反転構成がうまい。時制が数ヶ月、数年単位で行ったり来たりし、そのたびに、やられたほう/騙されたと思っていたほうが、じつは優勢だった、というどんでん返しが、ある。ここで敵・味方と書かなかったのは、スパイとは、味方の組織すら信用できない、または平気で裏切る世界だから。
アナはKGBだが、後半にはスパイ界の両巨頭たるCIAが登場し、ますます目まぐるしい展開となる。
KGBのボスが「ブス」と呼んだ、『007』ならMにあたる、アナのボスのおばさんは、どっかで見た顔なのだが、最後まで思い出せなかった(^^;)
本作でアナが美人じゃないのが残念ではあるが(恋人であるベリーショートのモデル女子のほうがよほど美人。髪を伸ばしてたら文句なかった)、アクションヒロインとして、十分な魅力がある。百発百中と言っていい、スパスパ拳銃で敵を倒すのは、『ジョン・ウィック』以上、『リベリオンガンカタ並みの快感。そちらがメインなので、殴ったり蹴ったりはあまりしないが、クライマックス、KGB本文から脱出するシーン、地下道(?)で敵の身体を脚で挟んで横に一回転しながら別の敵を蹴るようなアクションを、実に素早い動きで見せるカットは鮮やか!
スパイ/アクション/ミステリー映画好きなら観て損はない映画だ。先の『ルーシー』といい、リュック・ベッソン、凡作監督になったかと思ったら、佳作を着実に出す侮れない人だと認識を改めざるを得ないかも。