思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『映画 クレヨンしんちゃん 伝説の 踊れ!アミーゴ』


☆☆☆☆

クレしん』バンの『盗まれた町』をやってるのだ。何やってんの!? という凄いモチーフだが、これがマジに怖い(^^;)
身近な人が、次第に怪物に変わってしまうというのは、子供のころに一度は直面する、自分と他人のアイデンティティの問題ではないだろか。本作では、一見ケンがとれて,人が良さそうになり、サンバを聴くと踊り出す(このへんのメチャクチャさが『クレしん』らしい(^^;))、そして攻撃されたり、時として怪物としての顔を見せる。魔の手は、風間くんのママ、ひろしの会社の川島、そしてひろしとしんのすけのコピーまで野原家にやってくる。このへんの絶望感は、『温泉わくわく大決戦』をはじめ、『クレしん』映画では実にうまい。
最後の対決がなぜかサンバ、ときうバカバカしさも、『ラーメン大戦』でジェンガを踊ったり、『ロボとーちゃん』でコロッケロボが出てきたりと、『クレしん』映画のお約束なのかもしれないが、春日部の町民が春日部音頭を踊りだしたら、ラスボスがつられるとか、私的には『ラクガキングダム』と同様に、高速で「引く」展開が残念。ここからの決着もちょっと無理がある。ラスボスの登場も、伏線がないというか、唐突に出てきた印象。
映画のゲストヒロインが、受け口というのがふるっている。他のアニメじゃ絶対にできないだろう。
こんにゃくを素材に(埼玉の名産だったっけ??)クローンをつくる(そっくりさんの正体がこれ)とか、終盤の構成は『ラーメン大戦』と実によく似ている。

『火の鳥(10)』


☆☆☆★

太陽編(上)これは小学生の時にもらって読んでいた。当時はあまり意味がわからなかったが、今はだいぶ分かる。
白村江の戦いから、大友の皇子、大海人の確執、仏教伝来と土着の神との関係など。少なくとも、現在の私の右翼的、仏教徒的な史観からすると思想的には賛同できないが。
ただ、仏教伝来と、天王を外来からの侵略者、人間と別の高次元における神々の戦いとして描くのは面白い伝奇小説的な設定だと思った。少なくとも、上巻の時点では、主人公たちとの関わりがうまく縦横に織り上げられているとは思えないが、はたして結末は……?

巻き肩は治る!

小池義孝
☆☆☆★
東邦出版

巻き肩とはどんな状態か、その症状を解説。その後、やってはいけないこと、やるべきことを述べている。やるべきこととして、身体をどう動かすか、睡眠、食事の順番で、それぞれに生物・科学的な解説がなされていて、必要充分な内容。

「「伸びたまま固まってしまっている」筋肉をそれ以上に伸ばしても、緊張はほぐれません。それどころか、筋肉が壊れてしまうこともあります。(略)巻き肩の場合でいえば、背中の筋肉です。」

「収縮した筋肉を伸ばすストレッチは「ある程度の時間」をかけて行うのがコツです。(略)一般的には20から30秒くらいが目安」

日本一わかりやすい ABC予想


小山信也
☆☆☆☆
ビジネス教育出版社

NHKスペシャル』で知った数学上の証明だが、科学・数学に興味がある私のような人には隔靴掻痒だったので、解説本を読む探してみたのだが、これが意外にもぜんぜんない。フェルマーの最終定理なんかに比べると。
本書を読めば、ABC予想が、フェルマーの定理を拡張している、より普遍性のある、根本的な数学理論的にであることが分かる(ような気がする(^^;))。
ただし、『数学ガール』のような対話形式で書かれた内容から受けるキャラのイメージとイラストは、合っていないけど。

「「同じ数を何個か足し合わせる」という考えでは、整数倍しか説明できない(略)2×1.5を「1,5個の2を足し合わせる」といっても意味がつうじませんね(略)かけ算をどうやって説明すればよいんですか?
2×3を、縦横に同じ図形■を並べたときの総量と考えればいい(略)要するに、長方形の面積を、縦横の辺の長さの積とみなす」

ABC予想が示されれれば、フェルマー予想は当たり前になってしまう」

我が家は楽し』☆☆★

まるで戦前の映画? というくらい画像(フィルムの解像度)が良くないし、平々凡々な都会の日常を描いた作品。単なる保存状態なのかもしれないが。クライマックスで音割れしてたし。
タイトルや、笠智衆が主演なので、小津安二郎的や、『サザエさん』的なほのぼの家庭劇かと思いきや、それは序盤だけ。
お父さんが森永製菓(モロに工場の社名が出てくる。タイアップか?)での勤続25周年の表彰で、3万円(現在の感覚だと30万くらい?? 途中で家を建てるのに10万円でできる、という詐欺会社のエピソードがあるので100分の1だとすると300万??)をもらって、家族にプレゼントを買うものの、最後にはスリに残りを取られてしまう。
そこからは、長女が画家を目指すものの芽が出ない、借家を出ないといけないなど、『自転車泥棒』的に不幸な話になる。
かと思えば、ラストには長女の絵が入選、家は売らずに住む、など、どれもうまく収まる、という(都合良すぎる?)結末になる。


1951年 日本

『サマーフィルムに乗って』☆☆☆★

監督も、登場人物も、誰一人知らなかったが、「時代劇オタクの女子高生が、映画を撮る話」と知って、俄然興味を持った。
カメラを止めるな!』っぽさもありつつ、『スローな武士にしてくれ』と『逆境ナイン』の風味で描いたような作品。隠し味に『時をかける少女』もありつつ。実は『逆境ナイン』に一番似てるような・・・。
時をかける少女』が入っているのは、主役に抜擢したとある男が未来人なのだ。タイムパラドックスや、作った映画を封印する必要があるなど、ちょっと強引な設定(展開・縛り)がなされているが、本作では、どれにも登場人物はツッコミや否定的な意見を言わない。
まず、気になるのは、主人公は映画部だが、主要メンバーは恋愛映画を撮っている。時代劇を撮るために、スタッフをスカウトするのだが、これが部外者なのに、すんなり協力してくれるのが納得いかん。芸能人や学校のアイドルが出る、というならともかく、無名の素人が撮る時代劇で。
撮影が終了した時点で終わってもいいくらいなのに、そこからが結構ある。編集作業はまあいいとして、なんと上映会でクライマックス前に監督自身が上映を止めさせて、自分が敵役として殺陣を演じるのだ。しかも聴衆まで三下として巻き込んで、振り付け(殺陣)もなしに完全に「ごっこ」。そんなのうまくいくわけないやん。まあ、ここは春日太一氏の「決闘(チャンバラ)は恋愛だ」を知っているか否かで、評価が大きく変わるかも。いや、全部セリフで説明してるんだけどね(´д`)
上っ面だけ見れば、青春している映画。『アルプススタンドのはしの方』とかが好きな人にはオススメかも。

2021年 日本

『ガンマ第3号 宇宙大作戦』☆

東映版の『宇宙大戦争』かと思いきや、完全に子供騙しやね(´д`) 深作欣二だが、『宇宙からのメッセージ』よりひどい。
地球衝突まで10時間という位置で発見された小惑星に、国連宇宙軍の中佐たちが宇宙ステーション・ガンマ3号から爆破任務に赴く。それはギリギリ成功するが、小惑星にいたスライム状のエイリアンが宇宙服にくっついていることに気づかず、宇宙ステーションで成長・増殖してしまう。少なくとも現在の科学知識、それどころか当時の知見でも、突っ込みどころ満載で、いちいち指摘する気にもならないくらい。ただ、逆に唯一と言えるかもしれない正しい部分で、任務から帰ってきた隊員と、その装備を殺菌・滅菌しようとすること。
ただ、本作の宇宙人は紫外線をエネルギーにするので、それでピンチになってしまったので、仕方ない。
最初の粘菌・アメーバやスライム状なのはまだ良かったのに、成長するとガマガエルから手足を抜いて触手をつけたような、『仮面ライダー』や『戦隊シリーズ』どころか、低予算オリジナルビデオみたいな怪物になってしまう。ここからは完全にモンスター映画なのだが、なんか扱いがゴキブリ退治してるようにしか見えない(^_^;)
なお、本作は日米合作なのに、日本人が全く登場しないという、不思議な映画。
ミニチュア特撮の撮り方(構図や動き)が完全に『サンダーバード』のそれで、日本側は特撮パートを担当したのかな?? プロット的にのほとんどがゴキブリ・・・じゃなかった(^_^;) フローラと呼称するエイリアンと、宇宙ステーション内で追ったり追われたりしているだけで、『ウルトラQ』がズバリではあるが、30分の子供向け特撮でも十分消化できる内容である。


1968年 日本・アメリ