思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『最後の戦い』☆☆

凡庸なタイトルだが、リュック・ベッソンの初期作品。なんと白黒の無声映画なのだ。厳密にはセリフがないだけで、吐息や効果音は普通にある。セリフがなくてもわかるように、チャップリン的な、リアリティよりも、パントマイム的なオーバーアクションで演技設計されている。
おそらく『マッドマックス』的な、世紀末的荒廃世界で、廃墟と砂漠ばかりの世界で、スクラップになった車から部品を取ったり、地下にたまった水路から水を取ったりして暮らしている人々の抗争を描く。
撮影が素晴らしいのか、白黒なのに背景のディテールがバッチリわかるのが素晴らしい。その分、衣装は日本のオリジナルビデオと大差ないかも(^_^;)
時代が古いのは、ジャン・レノの髪がふさふさなのでわかりやすい。
セリフがないだけに音楽が重要なのに、的外れかつショボいのが非常に残念。低予算であっても、川井さんみたいに、印象的な音楽はできるのだが・・・。
ラ・ジュテ』的なSF世界観またはテーマがあるかと思ったが、そんなのはない感じがしたのが残念。

ターミネーター』☆☆☆★
30年以上前にテレビで観て以来かもしれない。構成とストーリーがめっちゃ強固なので、ほとんど記憶通りだった。
また、『ゼイラム』がこれをまんまベースにしている事、『ターミネーター2』もまたクライマックスのタンクローリーなど、ほぼ踏襲して作られていることも意外な発見だった。
あとは、サラ・コナーがブサイクなこと(^_^;) ベッドシーンがあるのも、時代性と、B級でスターじゃないからこそのサービスカットだったのかも。二人が一晩で結ばれる、というのもちょっと無理があるし。
テーマ曲も、やっぱりショボく、『ターミネーター2』のそれがいかに巧みなアレンジ/編曲をなされていたかも再確認。

パッセンジャーズ

☆☆☆★

めちゃ紛らわしいが、『パッセンジャー』とは別物。
本作では、飛行機事故の被害者のトラウマをケアする精神科医アン・ハサウェイが、奇妙な男の出現や、事故の謎と対面することになる。
精神科医が、カウンセラーとしと、クライエントと恋人関係になるのは禁断の事項だが、本作では、最初は男のほうから、中盤にはハサウェイのほうから進んで落ちてゆく。特に男のほうは、完全に自分が持てる/押して行けば女は断らないと思っている男の言動で、持てない男あるいは関心ない女の立場からすると実に不快。それでも落としてしまうかは、世の中に勘違い男が増え、ストーカー被害に困る女性が増えるんじゃないかなぁ……。
最後まで観れば、それらにも、作品内での理由があったことがわかるのだが。
私的には、途中までのプレイボーイ恋愛もの的な展開が☆☆、ラストで☆☆☆★まで持ち直したか、という感じ。
なお、テレビの吹き替え版で見たのだが、セリフが大仰というか、くどすぎて内容と合っていないと感じた。日本語版で、音響監督や声優の力量の重要である事が改めて実感できた(^_^;)

以下、ネタバレ

本作は、普通の字義通りのトラウマ克服恋愛ものかと思わせて、実は仕掛けあり、というのが最大の売り。
実は主人公は死んでました、というどんでん返しもの。というと類似作が浮かぶが、それとは異なるのが、主人公もヒロインも(どちらが主人公かは微妙なので、要するに男女どちらも)、それどころか飛行機事故を生き延びてトラウマを克服しようとしていた関係者(登場人物)ほぼ全員が死んでいた、という凄い設定。煉獄ものとでもいうか、『大霊界2』というか(^^;)

三体2(下)

☆☆☆☆

三体艦隊が太陽系に迫る。物語るは主役級が冬眠を経て、テクノロジーも進歩、宇宙艦隊も完成する。
がぜんスケールアップし、もはや中国製とか全く関係ない、世界的、地球的スケールで展開する。
水滴型の無人兵器の一筆書き攻撃が白眉。だがこれ、小説ならではの醍醐味で、映像ではこの凄さは伝わらないだろう。
人類側の宇宙艦隊の末路も、クール(冷淡)でいい。

『水とはなにか』上平恒
☆☆☆☆
講談社ブルーバックス

「気体分子は1秒間に数百メートルの速度で動いている(略)分子はお互いにまったくでたらめな方向に運動しているので、ほんのちょっと動くとする他の分子と衝突して進路を変える」

クラスター水は科学的な概観を装って消費者をごまかしている擬似科学の一部である」
そう言えばそんなの聞いたことあるかも・・・と言うクラスター水。マイナスイオンとか、プラズマクラスターとか、類似商法は後を絶たないが・・・。ちなみに陽イオンはカチオン、マイナスイオンと呼ばれている陰イオンは学術的にはアニオンというのが正しい。

麻酔のメカニズムは分かっていない、というのを読んだことがあったが、本書にはちゃんと書いてある
「ナトリウムイオンが細胞外から内部に流入すると神経の興奮が起こる。
 細胞に不活性気体を作用させると、この分子は疎水性であるから(略)脂質分子間やチャンネル蛋白質と脂質分子との間に溶ける。そのため細胞膜全体が固くなり、チャンネルが開くのを妨げ、ナトリウムイオンが流入できなくなり、麻酔が起こる。」

「水道水の味覚と温度の関係をしらべ(略)ると、約70度Cと13度Cの水がいちばんうまく感じ、35〜40度Cで特にまずく感じるということである。」

「細胞内の氷点をしらべた結果によると、零下10度Cと零下80度Cで凍る2種類の水が存在する。(略)零下80度Cで凍る水は、細胞内の蛋白質その他の生体高分子に直接結合している水であり、零下10度Cで凍る水は細胞質の残りの水である。強く束縛されていて、きちんと配列している水ほど凍りにくい。」

『モアベストオブFSS』☆☆☆★

ファイブスター物語』のファンである業界人たちが、好きなキャラ、メカ(MHのみならず、戦車、果てはバスまで)、ドラゴン、小物、靴までを抜き出した、一筋縄ではいかないファンブック。もちろんトイズプレスによる公式。キャラがないのは、第一弾(未読)で済んでいるからであろう。
なんと言ってもMHパートが良い。ナイト・オブ・ザ・ゴールドから始まって、ビブロスやホーンド・ミラージュ、果ては1コマしか登場していない名もなきやられロボに至るまでを網羅。単行本未収録のコマもいくつかあるのが良い。
特に谷明氏を始めとする原型師の寄稿は、非常に興味深いものがある。

魔物ハンター妖子宮尾岳
☆☆☆
少年画報社

OVAは1話だけレンタルで観たと思う。それとは違う内容だった気がする。うろ覚えだけど。
平成8年に描かれたものということで、OVAが終了してから描かれたもののようだ。そもそも、OVAが90年から95年にかけて作られていた、ということに調べてみたら驚いた(^_^;)
これ、アニメ用のキャラデザが秀逸で、それだけで「勝った」企画だと思う。
そもそも、なぜ中国でもないのにチャイナ服なのかとか、設定的には何の整合性もないんだけど。
この漫画は、多分キャラクターデザイナー本人が描いているんだと思うけど、ちょっといかにも「まんが」的な内容なので(緒方ていとかのライン)、アニメのキャラデザそのものが好きな私にはちょっと違う、と感じてしまう。
このマンガのストーリーは、王道とは助けた犬が妖怪で、回復したら人間の敵だったのだが、敵だと思ったほうが元から善玉だった、とか、一捻りある設定なのだが、一周回ってベタな結末になってしまう。