☆☆☆
これまた似たようなタイトルの作品が多くて困るが、是枝監督の実写映画。
海外の映画祭で賞を取ったのが何かもあったのか、評判ではあったので、ちょっと期待して観た。
ネタバレなしで語るのが難しいが、「人間、単純なレッテル貼りや、あの人はこんな人、と一言で語れるようなもんじゃない」ということを描いた作品。要は、重厚な人間ドラマ。
あと、露骨な『スタンド・バイ・ミー』オマージュもあり、同作が好きではない私は、同様に本作もピンと来なかった。
演技はみんなうまいし、作りも凝っているが、好みではなかった。
音楽は、抑えた、メロディが印象に残るが、坂本龍一だった。
以下ネタバレ
本作は、『羅生門』スタイルというか、視点によって、物の見え方が180度変わる、という作品。順に、主人公の少年の母親(安藤サクラ)の視点、少年の担任(瑛太)の視点、少年の視点、最後に少年の親友の視点、となる。
気になったのが、担任の先生の最初の態度だ。後から、周りの先生からいい含められていたことが分かるが、それちしても悪意がありすぎに見える。あ、本作で「怪物」として描かれているのは、明示はされないが、浮き上がってくるように演出されている、小学校またはそういう組織のことだろう。
あと、ある意味ではメインテーマである、主人公と親友との関係が同性愛的である、というのは、わたしには全然気が付かなかったなぁ……(^^;)
まあ、作品そのものが、多面的な受け取りを見越して、手がかり(伏線・仕掛け)を過剰に散りばめて、数打ちゃ当たる的に作っているので、気がついたところだけで解釈するのが適当なのかもしれないが。
親友の「身体の異変について、僕もそうなるよ」というのの意味と、同じクラスの女子がBLマンガを読んでいるのは完全に見逃したからなあ。
ただし、こういう同性愛的なテーマを、小学生を主人公にして、実写でやるのはいかがなものかと思うなぁ(´Д`) マンガとかならともかく。ま、大人でやった映画よりは、評判になる、という狙いは当たったわけだけど。
ラストシーンは、観ている間は、列車から脱出していて、台風一過に遊んでいるのかと思っていたが、死後のあの世描写というのが妥当なのかも。あるいはパラレルワールドで、死んだ世界と、分岐したか(後に観た『すもももももも』の影響受けすぎかも(^^;))。
あと、本作ではもっとも謎な人物が校長。田中裕子さんが「悪役」を演じるのはそこまで数を見てないけど、極めて珍しいのでは?
本作で描かれている範囲内では、どう見ても性格破綻または分裂しているキャラだ。本作の脚本の初期稿では3時間相当のボリュームだったそうなので、校長先生のパートがあって、そこを大幅に削ったせいなのかもしれない。だって、スーパーで走り回る他人の子供の足を引っ掛けて転ばせるシーンさえなければ、整合性が取れるのに、敢えて残してあるのは、観客を混乱させるためとしか思えない。それをひっくりかえす背景が描かれていたのが、カットされたとしか思えない。